パニック障害の脳 2004年1月20日 |
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パニック障害患者では、脳の3つの分野で感情をコントロールする神経伝達物質システムに問題が発生していると発表された。脳スキャンで見ると、脳の中央にまたがる3つの構造で、セロトニン受容体が健康体に比べてほぼ3分の1欠落しているのが分った。
今回の発表で、パニック障害患者の脳が生きている状態で調べられ、健康な脳とは違うのが始めて発表された。セロトニン受容体とは今最も売れている抗鬱剤SSRIが作用する重要部分であり、遺伝子が発病の引き金になっていると予想される。 この研究は、NIMHの神経症研究プログラムのアレキサンダー・ニューマイスター氏及びウェイン・ドゥレベッツ氏とそのグループにより、2004年1月21日の神経科学誌で発表された。 毎年、アメリカでは240万人の人がパニック発作に襲われる。発作は激しい不安と心臓発作のような症状を伴う。パニック障害は多くの場合、広場恐怖症のような慢性的不安症に発展して行く。パニック障害は前から遺伝性が指摘されていて、科学者は今回も遺伝子に注目している。恐らく遺伝子が作用してセロトニン受容体表現を弱め、パニック障害を引き起こすのでは無いかと推測されている。 コロンビア大学のリーン教授とその研究チームは2002年に、ネズミを使った実験で、ネズミがその生まれてから間もない時期に神経伝達物質受容体を欠くと、そのネズミは成長しても不安症を示す傾向があるのを発見している。例えばこのネズミは慣れない場所でえさを食べるのを嫌がる傾向がある。この実験では遺伝子に手を加えて成長初期の段階で受容体の活動を抑えている。 ごく最近のノックアウトマウス(遺伝子操作してある種の受容体の活動を抑制しているネズミ)を使った研究では、SSRIが海馬の中のセロトニン受容体(5−HTIA)近辺の神経細胞を再生していると発表している。 今までの研究で、この前部、後部帯状回は不安の発生と重要な関係があるのが分っている。縫線の5−HTIA受容体を刺激するとセロトニンの合成、発射を促す。 過去の鬱病患者を使ったPETスキャンテストでは前部、後部帯状回の受容体には劇的な減少が見られなかったが、縫線では41%健康な人に比べて受容体が減少しているのが確認されている。これらから、鬱病と神経症ではかなり重なり合うのが分る。 動物実験では、ストレスが加わるとホルモンの一種であるコルチゾルが過剰に分泌され、セロトニン5−HTIA受容体に関わる遺伝子の表現を抑制する事が分っている。しかし、パニック障害ではコルチゾルの活発な分泌は認められなかった。 脳科学ニュース・インデックスへ |