アメリカではおよそ1,400万人がアルコール依存症で苦しんでいる。
「分かっていても止められないのがアルコール依存症です。今回の発表はアルコール依存症治療への一歩前進です」とアメリカ国立アルコール依存症研究所のアンドリュー・ホームズは言う。
脳皮質は感情、報酬、動機、不安をつかさどる脳で、人間を人間らしくしている重要な部分である。アルコールは覚醒剤と違って、脳に広範な影響を与えるため、治療と言っても脳の何処に焦点を絞るべきか難しい。
「我々は酒を飲む時、ある程度の抑制する。この抑制を脳のどの部分がしているかが分かれば、アルコール依存症が解明できる」とサンタクララ大学のリンゼイ・ハラデーは言う。
研究ではネズミを訓練して、レバーを押すとアルコールが飲めるようにする。その後、レバーを引くと同時に軽い電気ショックを与えた。電気ショックを経験すると、多くのネズミはレバーを引く動作を止めるが、止めないネズミもいる。ハラデーはネズミの脳に電極をはめ込んで、アルコールを飲むのを止めるネズミの脳のどの部分が活性化するかを調べた。
「アルコール摂取を止めるネズミでは、内側前頭前野にある神経細胞が活性化していた。しかし、そのまま飲み続けるネズミでは活性化してなかった。この神経細胞群が恐らく飲酒を抑制する役割をしているのだろう」とハラデーは言う。
内側前頭前野は脳の他の部分ともつながっていているので、ハラデーはその連結する他の脳にも研究を進めた。
研究では、光遺伝学と言う光を使う技術で脳の特定部分の活動を停止させることに成功した。側坐核に結び付いている内側前頭前野の活動を停止させた所、電気ショックがあるにも関わらずアルコールを飲み続けた。
「この回路を停止させると、抑制が解かれてアルコールに手を出すようになる。アルコール依存症では、機能不全になっているのかも知れない。現在有効な治療法はなく、治療をしても半分の人たちは一年以内に飲み始める」とハラデーは言う。
アルコール依存症では脳の何処かが機能低下しているのであろう。そこを解明すれば有効な治療法に結び付く。
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