HEALTH


抗鬱剤と離脱症状

2018年4月17日
By BENEDICT CAREYAPRIL
ニューヨークタイムズ


4月8日に発表されたニューヨークタイムズの”抗鬱剤とその離脱症状”を読んだ読者から沢山の意見が寄せられた。読者の幅は広く、10代から学生子供を持つ母親、引退者まで8,800人の方々からであった。
その内の20人程が「抗鬱剤は文字通り命を救ってくれた。人は心の病の深刻さが分かっていない」 と述べている。ある医師は抗鬱剤に対する不必要なほどの警告が問題だと指摘している。

意見は多岐にわたるが、1987年に市場に現れたプロザックが社会に浸透し、新しい文化を形成し、社会の心の病への理解が進んだ事を読者は知らせてくれた。ただ、既に登場から30年も経ち、年齢により抗鬱剤に対する考え方に違いを見せている。

私は今58歳になるが、私の年代あるいはそれ以上の人達には、神経衰弱とは精神病の代名詞であった。この人達がプロザック、パクシル、ゾロフトを始めたきっかけは、離婚、失職、家族の死等心の衝撃がその理由であった。

その一人であるアイオワ州のキャロル・ウィルソン74歳は、「あの頃、夫が癌を宣告され、私は酷く落ち込み、かかりつけの医者に頼んでゾロフトを処方してもらいました。夫は既に死亡しているが、ゾロフトの量を200rから100rに減らそうとした所、物凄い離脱症状に襲われ、むかつき、そわそわ、泣き叫びと、とても駄目でした」と言う。

ウィーンに住む75歳のジェームズ・ミドキフ氏は「私は警察官です。妻が重病で苦しんでいて、その苦しみに耐えきれず抗鬱剤を飲み始めました。一か月前に抗鬱剤レクサプロを止めようと思い、少しずつ減らしたのですが、その離脱症状が凄く、震え、パニック、風邪のような症状、吐き気、疲労、寝汗、チクチク、手足の無感覚等で困っています。人に聞くと、一年後も離脱症状が抜けないと聞いて落ち込んでいます」と言う。多くの60代、70代の人は、最初は薬が効いて助かったと言うが、薬を根本治療と見ていないから、いずれ止めたいと考えている。

1990年代の半ばに製薬メーカーは、抗鬱剤を長く使えば慢性的鬱状態も改善出来ると主張し始めた。政府もそれに影響されて制限を緩和し、抗鬱剤の長期服用が解禁された。丁度メーカーが鬱状態は脳内の神経伝達物質のバランスの崩れで起きると説明し始めた時期であった。
この説明はおかしい。何故なら、科学は未だ神経症や鬱病の病理を解明していないからだ。しかし、1997年に政府の抗鬱剤処方規制を緩和した時をいつにして、製薬メーカーは宣伝攻勢に出た。

心の病は気のせいではなく、生物学的理由があると説明された人達は抗鬱剤に走り、処方も短期的処方から長期的処方に変化した。
この時代の人は、抗鬱剤を飲む理由として対人恐怖、パニック障害、 PTSD 、鬱と名前を挙げ、薬を止めたい理由も勃起不全、体重増加、妊娠、産後の鬱の消滅等、具体的に言う。


 ロビン・ヘンペルは婦人科医の薦めで抗鬱剤を飲み始めた。”薬の離脱症状がこれほど苦しいと分かっていたら薬を飲まなかっただろう”と彼女は言う。

フロリダのケティー・スラッタリー39歳は 「妊娠時にエフェクサーを止めようと思い、思い切って服用をゼロにしたのですが、その副作用が激しく諦めました。今は薬のカプセルを割り、一回の分量を1rとし、2,3日おきに飲むことにしています。こうして、ふらつき、頭痛、もうろう感から救われました」と言う。

フィラデルフィアのアミー・キャノン42歳は「産後の鬱がゾロフト飲み始めのきっかけで、鬱は1年後に殆ど消えました。もう必要がないから薬を止めようとすると、いきなり頭を殴られたようなショックを受け、感情も不安定になりました。これではダメだと観念して薬を再開した。その後ゆっくりと薬の量を減らして6か月になりますが、未だ完全に離脱症状が消えたとは言えないです。でも産後の鬱を薬で乗り切る事が出来たのは良かった」と寄せて来た。

今の所、胎児への抗鬱剤の影響は限られているとされている。むしろ鬱状態をほって置くと、本人と赤ちゃんへの危険が高まる。

社会がより心の病に対して寛容になった結果、抗鬱剤を飲む事に人も医者も躊躇しなくなった。その結果、2000年頃からは、医者は子供にまで抗鬱剤を処方し始めた。

ニューヨークタイムズの呼びかけで、20代の人達から沢山意見が寄せられた。この人達が抗鬱剤を処方された時は未だ子供で、従って抗鬱剤を飲ませる決定をしたのは親であり、本人も何のために飲んでいるか分からなかった。
彼らが高校や大学に入るころには、抗鬱剤が更に深く社会に入り込み、友達に抗鬱剤を飲んでいる人を見つけるのは簡単になった。
「私は学友6人と大学寮に住んでいるのですが、その内の2人が抗鬱剤を飲んでいます。薬の話になると、彼らは最新の薬を試していると偉そうに言う」と21歳のジュリアンは言う。

「もし私の親が間違っていたとしたら、私が子供の頃にパクシルを与えたことです。薬を止めようと決心したのは23歳だから、既に長期に服用していて副作用は大変だった。卒業研究としてこの問題を抱えている人達と語りあい、出来れば助けたいと思っている」と28歳のエマ・ドレイファスは言う。

彼らの多くが抗鬱剤の長期服用による脳に及ぼす影響を知りたいと思っている。 その影響が分からない中、社会は野放しの巨大な抗鬱剤実験場と化している。



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