不安を決める長い遺伝子と短い遺伝子


2000年6月14日
貴方が手の平に冷や汗をかいたり、強迫観念に襲われたり、パニックになって心臓が不安で激しく鼓動したとき今までは貴方の頭の性にしていたと思いますがこの際遺伝子を考えてみたらどうであろうか。科学者の研究によると神経症には遺伝子が絡んでいるらしい。この発見により今後人がパニック障害や神経症になりやすいかどうか医者が診断し易くなる。

コロンバスにあるオハイオ州立大学の心理学助教授であり著者であるノーマン・シュミット氏は「神経症は遺伝性である」と言う。「問題はどの特定の遺伝子がその役割をしているかです」脳内の化学物質をコントロールするある種の遺伝子が不安発生により関与していて、その遺伝子を持っている人は持ってない人より強く不安が起きることが実験室で確かめられたと今日発行のアブノーマルサイコロジー誌が伝えている。

アメリカ神経症協会によるとアメリカでは1千900万人以上の人が神経症に苦しんでいる。不安と恐怖は
慢性化していて軽減する可能性は少なく治療をしないでほっておくと次第に悪くなる。取りついた強迫観念、フラッシュバック、身体的パニック症状、悪夢は苦痛以外のものでなくそれから逃れるために神経症者はアルコールや薬物に依存する傾向がある。

アメリカ保健局の研究者が発見した5−HTT遺伝子と呼ばれるセロトニン搬送遺伝子の中で長いタイプの遺伝子が問題を起こしているらしい。このタイプの遺伝子は脳内の細胞がお互いに連絡を取るときどれほどセロトニンを使うかを決定している。セロトニンは化学物質で脳内で神経情報の伝達の役割をしている。シュミット博士によると「神経症発症には単に遺伝子が関与しているだけでなくどれほど急激にセロトニンがニューロンに吸収されるかそのスピードが問題なのです」

「ニューロン間にたくさんセロトニンがあればそれだけ神経細胞同士が情報をスムーズに交換できるのです。すなわち脳細胞が容易に話し合いが出来ることを意味しています。この長いタイプの5−HTT遺伝子はニューロン間のセロトニンをすくいあげる力が強いのです」と博士は言う。シナプス、すなわち神経細胞の間隙にあるセロトニンが吸い取られてしまうと脳細胞は情報伝達が出来なくなり不安とか他のマイナス感情発生の原因になる。

この5−HTT遺伝子の変種が不安発生の原因になっているかテストするためにシュミット博士と保健局の研究者は72人の被験者を2つのグループに分けてテストをした。1つのグループは長いタイプの遺伝子をもつが心および体の病気を発生してない人達。他は短いタイプの遺伝子を持つ人達のグループ。この2つのグループについて不安の感受性を調べた。息苦しさを感じさせて窒息するような不安が起きるかどうかのテストです。

被験者は10分の間隔を置いて2回の呼気をする。最初は一定の圧力をかけた部屋の空気。2回目は炭酸ガス混合空気、この空気を吸うと瞬間的に息切れ状態になる。研究者は参加者に2回目の呼気の後、不安の強さを述べるように言った。同時に被験者の血圧と心拍数も記録した。

長いタイプの遺伝子を持つ被験者は短いタイプの遺伝子を持つ人達より炭酸ガス混合空気を吸ったとき強い不安を感じたと言った。不安に感受性が高いグループでしかも長いタイプの遺伝子を持つ人達は他のグループの人達より長い時間早い心拍数を経験した。「以上がこの報告書の目新しい部分です。誰も今までは遺伝子と神経症の相互関係を調べなかった」とシュミット博士は言う。

メリランド州のロックビルにあるアメリカ神経症協会の会長であるジェリリン・ロス氏は言う。「この発見は大変重要なのです。何故ならどんな心の病も大変不名誉な事とされているからです。人は皆こう言います。すべて考え方の問題、しっかりしなさい、克服するのですと。この発表は最近富みに増えている脳スキャンの研究とともに神経症をわずらっている人の脳はそうでない人の脳とは違うことを示しています。今まで噂で言われて来た神経症は家族遺伝性の話を裏付けるものです。私は数千人の患者を見てきていますが、近親者に神経症がいない例は殆ど無かった。神経症の発見は早ければ早いほど不名誉、恥じ、当惑から軽減される。今我々が理解しないとならないのは神経症は事実存在していて重大であり治療されるべきなのです」とロス氏は言う。



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