神経症の発症原因は生まれる前後にある可能性

2002年3月27日
 
最近のアメリカの科学者の発表によると、神経症の発症原因は生まれる前後にあるらしい。マウスの実験によると、ある種の受容体が生命が誕生した後の数日間欠乏していると、後に成長してその受容体が普通の状態に戻っても、人間で言う所の神経症の状態に陥っているのが分かった。
神経伝達物質であるセロトニンは気分に関連する化学物質である事が今までに分かっている。セロトニンの受容体が不足しているマウスは異状に不安反応を示すのが分かっている。しかし数あるセロトニン受容体のどれが不安を起こす原因になっているのかは誰も分からない。

このなぞを解くためにニューヨークにあるコロンビア大学のコーネリウス・グロスとその研究チームは神経伝達物質のセロトニン受容体が大脳皮質と海馬と扁桃体にだけ存在するマウスを作り上げた。これらの部分にある受容体が機能するだけでマウスは正常に動作するのを付き止めた。

次ぎは遺伝子工学を使って受容体を活動させたり、停止させる事である。研究チームは抗生物質であるドキシサイクリンを使ってそれに成功した。ドキシサイクリンを投与するとマウスの受容体は活動を停止した。しかしその実験を成人したマウスにやっても異状行動は見られなかった。

所が大発見はこのドキシサイクリンをマウスが生まれる直前に投与した時に起きた。研究チームは母親マウスが妊娠時にドキシサイクリンを投与した。即ち子供マウスのセロトニン受容体は胎児の時、及び生まれて間もなくの間は活動を停止している事になる。その子供マウスが成人になると受容体は既に正常に働いている。

この成人マウスの行動を見ると強い不安反応を示しているのが観察された。かごの隅や狭い場所に体を丸めてじっとしている事が多く、食べる時も強い不安を示した。

「この実験が示すのはマウスではある一定の時期に神経細胞が活発に細胞同士の連結あるいは連結の破棄をしている」とグロス博士は言う。セロトニンはこの神経細胞同士の連結を促す重要な役割をしているのであろう。この重要な時期には受容体は活性化しているべきであるし、一連の神経細胞の成長過程に障害があると動物が正常に行動が出来なくなると思われる。

ジョンホプキンス大学のソロモン・スナイダー氏はこの実験は独創的であり他の神経伝達物質と行動の関連を解明するのに役立つと述べている。彼はまた幼児期の母親の無視が子供に与える影響にもこの研究が役立つと考えている。「多分セロトニンが関連する神経細胞、受容体の不正常の状態が成人してからの感情の不安定を引き起こす原因であろう。だから母親の子供に対する態度が子供の成長に大事なのです。人間とマウスは脳の発達段階で同じステップを踏むと仮定すると、今回の発見は脳の発達を説明するものであるし、神経症の原因にまで迫るものである」とスナイダー氏は言う。


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