BBC  Future


脳の微調整

2016年5月26日
BBC
By Hugh Hunt



自転車を乗るのは誰でも簡単であるが、一体どうして倒れないように乗れるのであろうか。回転する車輪が駒の役割をして、自転車を安定させていると習ったが、本当であろうか。確かに駒が回転すると、駒は回転軸方向に立ち、回転を続ける。地球も自転のおかげで地球の太陽に対する傾きは一定になり、安定した季節変化が得られる。

オートバイでは車輪は重いし回転も速いから、ジャイロ効果が十分出ているが、自転車のジャイロ効果は知れている。もし自転車がジャイロ効果だけで立つなら、前進さえしていれば自転車は安定し、乗り方を習う必要がない事になる。しかし、誰でも子供の頃、自転車乗りを練習している。実は、自転車を立たせているのは我々の脳なのです。

例えば平らな地面で、一直線の白線の中で自転車を走らせたらどうなるか。大変難しいはずだ。次に、両手でバランスと取りながら、片足のつま先で立ってみよう。体勢を保つのは物凄く難しい。しかし、倒れそうになったら、もう片方の足のつま先に重心を変えたら急に立つのが楽になる。これを英語ではrunningと表現するが、脳はrunningをしながら、体のバランスを保っている。脳による微調整が体勢を維持する一例だ。

我々は意識していないが、自転車に乗っている時、脳は常にハンドルを微調整している。右に傾けば舵を少し右に切り、左に傾けば左に切る。この揺れは誰にもあるが、特に小児の揺れが大きい。プロのサイクリストでは、揺れは最小に抑えられていて、揺れているように見えない。

もう一つ自転車の設計には素晴らしい仕掛けがある。それはハンドル軸の先端で、前輪の軸を固定する部分が、少し前方に曲がっている。この仕組みの意味が分かる人は少ない。敢てこのようにした理由は、手をハンドルから放しても、体を少し右に傾けると前輪は少し右に向き、左に倒せはハンドルも少し左に向き、安定を維持できる。図を見ても分かるように、ハンドル軸の向かう方向と、前輪が接地する部分に少しのずれがあり、このずれを英語でTrailと呼び、このおかげで自転車の安定性が増す。実際、今までにTrailのない自転車は作られていて、乗ることが出来た。どのような自転車を作ってもどうにか乗れるのは、やはり我々の脳の作用なのです。



サーカスでやるような、自転車を後ろ向きに運転するには何カ月も訓練が必要になる。右と左の手を逆にして発車したらどうだろう。とても発車できない。あるいは、動いている時に、左右の手を逆にしたら直ぐ倒れる。もし自転車が、ジャイロ効果で立っているなら、こんな事は起きないはずだ。サーカスや路上パーフォーマンスで、自転車を逆向きに運転出来るのは、一度身に着けた技術を消して、もう一度乗り方を習ったからなのだ。

ではジャイロ効果はどれ程あるのか。確かにあるのであるが、速度を上げて乗らない限りその効果は知れている。計算しても、自転車を垂直に立たせるには微々たるものだ。ジャイロ効果が自転車乗りに重要でないのを証明するために、私は前輪をもう一つ取りつけて、それが逆回転する自転車をあつらえた。逆回転する前輪が、ジャイロ効果を相殺するから、不安定になるはずであったが、そうはならなかった。でも、こんなおかしな自転車に乗るなんて楽しい経験であった。1970年にデービッド・ジョーンズと言う人も、やはり同じ試みをしている。その結果、自転車を安定させているのはジャイロではなく、我々の脳である事が分かった。

では、自転車乗りを学習する一番良い方法は何か。子供が補助車輪付きの自転車を乗るのを見て、私は良くないなあと思う。補助車輪が子供の脳が学習するのを邪魔しているからだ。脳が学習するには、揺れる必要がある。揺れながら自転車を立て直す経験が必要なのです。



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