拒否される衝撃 

2003年10月9日
  

今回の発表によると恋人にふられると、その衝撃は脳の痛みを感ずる中枢に及び、体の痛みと同様に我々に痛撃を与えると発表した。

この研究では被験者を意図的に悪意に満ちたやり方でコンピューターゲームから除外して、被験者の脳をスキャンで調べた。その結果、脳内に生理学的に説明できる変化を発見している。

「社会に受け入れられたいと思うのは人間の基本的欲求であるに違いない。人に拒絶されるのは体に傷を負うのと同じくらい危険な兆候と我々は読み取るのであろう」とカリフォルニア大学ロスアンジェルス校のナオミ・アイゼンバーガー氏は言う。
     
実験では最初コンピューターゲームを他の2人と共に楽しむ。ある時点で被験者は他の2人から、いきなりゲーム参加を拒否され、ゲームができなくされる。この拒否されたショックは実験では脳の前部帯状回に現れた。この部分は体の痛みとその不快感を感じる場所でもある。

「人が離婚、パーティーへの不招待、デート申し込みの拒否等を経験すると、脳の前部帯状回が刺激されて苦痛を感じることが今度の実験で分った。ここは我々が親しい人との別離を経験する時、活発に作動するし、特にその人が死んだ時や恋愛が破綻した時は強く反応する」 とアイゼンバーガー氏は言う。

オハイオ州のボーリング・グリーン州立大学心理学部のジャーク・パンクセップ氏は前部帯状回は今まで体の痛みと関係のある場所と考えられていたとサイエンス誌上で論評している。「今回の研究で前部帯状回が体の痛みばかりでなく、社会的拒否にも強く反応することが分った。今まで詩人により恋に破れた悲しみが歌われていたが、それが神経生理学的にも裏付けられたわけである」と氏は言う。
       
「社会的拒否が強烈な痛みを伴うのは、人間が生存するために発達させてきた防御メカニズムのためであろう。人間は成長に時間がかかり、その間は親、社会から守ってもらわないとならない。でなければ生存が脅かされるわけである。グループからあまり離れない為に、我々の脳の前部帯状回が拒絶された時に痛みを感じるよになった。子供が最初にやけどをすると、それ以来、火を気をつけるようになるのと同じく、人間は人に拒絶されると傷みを伴うので、できるだけ人と一緒にいようとするのでしょう」とアイゼンバーガー氏は説明する。


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