PTSD(心的外傷後ストレス障害)の個人差


2002年5月15日

我々は人が傷ついたり苦しんでいる様子を見ると恐怖にたじろぐ。しかしある人ではこの反応が強く起きるのが今までに確かめられている。最新の研究発表ではその原因は大脳辺縁系の中にある、ある種の神経受容体が不足している為では無いかと発表している。大脳辺縁系は内部脳であり、我々の感情をつかさどっている重要な器官です。

その受容体とはミューオピオイド受容体と呼ばれる器官で苦痛の緩和と快楽反応に重要に関わっている神経伝達組織の一部です。

「人に恐ろしい写真を見せてどのように反応するかを脳スキャンを使って調べこの受容体との関係を調べました。この研究がPTSD解決への糸口になると考えます」と研究著者は言う。PTSDとは心的外傷ストレス障害を意味し兵士、救助隊その他で悲劇的場面を経験した後に襲われる心的障害です。

「この研究結果は惨たらしい場面に反応する脳と神経化学組織であるオピオイド(脳内麻薬様物質)組織との関連性を示唆するものである。この関連性性が不快な刺激に脳がどう反応するかに重要な手がかりを与えるのです」とミシガン大学の精神科助教授であり論文発表者であるステファン・テイラー氏は言う。

この研究は昨日発表されたNational Academy of Sciences会報に記載されていたものです。

研究ではPETスキャンを使いミューオピオイド受容体と脳の活動の関係を調べた。大脳辺縁系の活動状態は血液流量をPETスキャンでモニターしながら調査された。

研究では12人の被験者が参加してPETスキャンを二度実施した。1回目のスキャンでは各人のミューオピオイド受容体の数が測定され、2回目のスキャンでは白黒写真の普通の被写体と不快な被写体を見せて脳の反応を見た。

不快な写真とは血のりの付いた顔や死体であり、普通の写真とは和む景色と特別の意味が無い普通の顔写真です。
不快な写真を見た瞬間、全員の大脳辺縁系の活動が活発になりましたが、活動量はミューオピオイド受容体の数が少ない人が大きかった。

「ミューオピオイド受容体が不快な刺激に対する過剰な脳の反応を抑制するようである。ストレスに激しく反応する人の脳のメカニズムが分かればPTSD治療へ更に1歩前進できる」とテイラー氏は言う。

あるPTSDの専門家によると気分の悪くなる光景に人はどう反応するかの研究で、今までにこのミューオピオイド受容体が注目された事が無かったそうです。

「今までに大脳辺縁系が感情に関わっている事が分かっていた。今回の研究は更にその中のミューオピオイド受容体が特殊な役割をしている事が分かった。この研究でよりPTSDが理解できるようになる。次ぎはトロウマを経験した人でPTSDを起こした人と起こさなかった人のミューオピオイド受容体の数の比較です」とシナイ山医学校とブロンクス退役軍人医療センターのストレス障害研究部門主任であるレイチェル・イェフダ氏は言う。

PTSDが発生する場合、ミューオピオイド受容体の数がストレスを受ける前から少ないか、あるいはストレスを受けた後少ないか、両方が考えられる。

「少ないミューオピオイド受容体の数が不愉快な経験に対して強く反応する原因なら、何故人により同じ経験をしてもPTSDになるかならないか分かるような気がする」とイェフダ氏は言う。



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