エゼクイール・モーセラ心理学助教授が唱える”受動的枠組み理論”によると、意識は数か国語が飛び交う中での、通訳の役割みたいなものだと言う。 「通訳は翻訳して会話の内容を相手に知らせるだけで、会話を構成している人ではないし、会話に基づいて何かのアクションを開始する人でもない。同じように、意識の情報は意識で作り上げられたものでもないし、意識に反応しているものでもない。意識は仲介の作業をしているだけである」とモーセラは言う。 モーセラのこの革新的理論は今年の6月22日に”the journal Behavioral and Brain Sciences”に発表された。 「我々は欲望を感じ、考え、目的を持って行動するから、意識が我々を制御しているように思うが、実際は、簡単な作業の繰り返しをしているに過ぎない。意識とは、より基本的で静的なのです」と彼は言う。 モーセラの枠組み理論によると、いわゆる”自由意志”はそもそも存在しない。意識とは単に骨格筋に伸縮情報を連絡するだけの存在になる。 例えば、インターネットを例に取れば、インターネットは本を購入したり、ホテルを予約したり、最新のニュースを読んだりと莫大な作業を可能にしてくれるが、実際はパソコンの前に座った人間が情報を引き出しているのであり、インターネット自身は意思のない機械的作業をしている。 モーセラの理論では、意識を巡らすとは考えない。 「我々は、ある考えから別の考えが浮かび上がるから、一つの考えがもう一つの考えを引き出していると思う。しかし、一つの考えはもう一つの考えにつながっていない。考えは、無意識からの情報に反応しているに過ぎない」と彼は言う。 彼が、この考えに行きつくまでに10年以上かかっている。 「これほど時間がかかったのは、人は意識を考えるときに、定義と目的を混同しているからです。皆、意識を知覚として捉えようとするが、アクションとは取らない」と彼は言う。 この理論は精神疾患の研究には大きな意味を持っている。「何故我々は衝動から逃れることができないか。理由は、意識は衝動と何の関係もないからです。一方衝動の中枢も、考えにお構いなく衝動を作り出す」と彼は言う。 「人類の歴史の殆どは狩りと食物採取であった。抽象的な意識より、迅速な行動が要求された。意識とはこのような条件下で発達してきたことを忘れてはならない」と言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |