不安の誘発と抑制

2011年9月7日 サイエンスデイリーより

健康な人と不安症の人の違いは危険が迫った時に適正な不安で対応するか、度を越した不安を起こしてしまうかの違いであろう。

マックスプランク精神医学研究所は遺伝子工学を使ったねずみの研究で、ある神経回路には不安を起こす作用と不安を抑制する2つの作用があるのを発見した。この神経回路とはストレスで分泌されるコルチコトロピン(CRH) とその1型受容体(CRHR1)の系であった。大脳辺縁系の中でもグルタミン酸塩を放出する神経細胞では、CRH及びCRHR1は不安を発生していたのに対して、中脳にあるドーパミンを放出する神経細胞では不安を抑制していた。

不安症の患者では、コルチコトロピン1型受容体の神経回路に問題が生じているのではと専門家は考えている。生物のストレスに対する反応は生存に欠かせないが故に、バランスが取れた反応が要求される。コルチコトロピンはストレスが加わると分泌され、その受容体に結びつくことにより生物を緊張状態に置く。不安症と鬱病の患者ではCRHが多く分泌されている。

マックスプランク研究所のジャン・デューシング等は、遺伝子工学で特殊のねずみを作り、このねずみのCRHR1受容体をオンにしたりオフにしたりしてその働きを調べた。

面白いことに神経細胞により特有の活動パターンが見られ、前脳領域(皮質、海馬、視床、中隔)ではグルタミン酸作動性ニューロンやGABA作動性ニューロンでCRHR1が活性化されていて、不安を誘発していた。

中脳(黒質, 腹側被蓋野)ではドーパミン神経細胞でCRHR1は不安を抑える働きをしていた。この神経細胞は前脳でドーパミンを放出して不安を乗り越える行動を起こしていたからだ。

故にCRHの受容体に拮抗する物質が発見されれば抗不安剤あるいは抗鬱剤として使える可能性が出てきた。専門家は不安症の患者ではCRH系が一部で過剰反応して、バランスを欠いた不安反応を引き起こしているのだろうと推測している。



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