ケタミンによるアル中治療

2022年1月14日


最近発表された研究によると、ケタミン点滴と心理療法を組み合わせると、重度のアルコール依存症患者の治療でその断酒期間を長引かせる効果がある事が分かった。
The American Journal of Psychiatry誌に発表された第二試験の結果では、ケタミン少量点滴を3回実施し、心理療法を同時に組み合わせると、副作用を起こすことなく、患者の断酒期間を長引かせるのに成功した。

英国エクセター大学が行ったこの試験では96人のアルコール依存症患者が参加した。試験実施後6か月間で、ケタミンと心理療法を受けた患者では162日をアルコールなしで生活出来た。これは87%の断酒成功率で、偽薬を使った患者と比較して2.5倍高い数値であった。

この結果、ケタミン点滴と心理療法を併用すれば、重度のアルコール依存症の治療に効果的であった。尚、最終判断を下すには規模の大きな試験が必要である。

アル中は、病気の中に占める負担割合が5%以上と言われて社会的負担が大きいが、現状では有効な療法は存在しない。しかし、以前から、ケタミンはアルコール依存症の断酒期間を長引かせるのではと言われていた。

理由の一つとして、ケタミンには抗鬱効果があることだ。最近アメリカ食品薬品局はエス・ケタミンを重度鬱病治療薬として認可している。エス・ケタミンとは鼻スプレー型ケタミン誘導体である。
アルコール依存症では鬱状態がよくみられ、鬱状態が強いほど断酒失敗率が高い傾向にある。ケタミンは鬱状態を緩和する効果があるから、それが再びアルコール依存に戻ることを防いでいるのではないか。鬱状態を緩和すればより心理療法の効果も増すことが考えられる。

また、ケタミンには脳神経細胞を新生する可能性がある。薬物依存症の患者ではその機能が損なわれている。神経細胞が新生されるなら、患者は心理療法から学んだ知識を体得できるわけで、療法の範囲も広がる。

ケタミンは、心の乖離とか心の肉体離脱現象を引き起こす薬物として知られている。自分を傍観者として見るわけで、瞑想を実行したとき得られる経験と似ている。

ケタミンは麻酔薬として世界で最も使われていて、WHOもケタミンを痛み止めの必須薬としている。ケタミンは他の麻酔薬に比べて呼吸や血圧に影響を与えないので、高価なモニター機材なしに手術ができる。従って、麻酔の専門家が不足し、清潔な水道、電源、酸素等も得られない低所得、中所得の国で特に必要とされている。
また、最近、ケタミンの鬱治療への可能性が高まっている。



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