ベイラー医科大学のサミーア・シース、ウェイン・グッドマン、ニコール・プロベンザ、サンディー・レディー、アンソニー・アラム等により、ある特定の脳波が強迫行為の発症に関与しているとNature Medicine誌に発表された。
「最近は脳深部刺激療法が発達して、強迫行為の患者の脳を持続的に観察することが可能になった。これにより症状を起こすであろう脳神経活動を見つける事に成功した。研究の対象になった人は従来のやり方では治療が困難な12人であった」とニコール・プロベンザは言う。
強迫行為はそれほど珍しくなく、人口の2-3% が罹患していると言われている。治療が難しく、酷くなると繰り返し行為が止められなくなり、生活に重大な支障が生じる。およそ20-40%の人が心理療法や薬物に反応しない。
脳深部刺激療法は2000年代の初めから始まり、今は強迫行為にも応用されるようになり、受けた人の3分の2が改善している。
脳深部刺激療法とは心臓ペースメーカーに似ていて、胸に埋め込まれた装置から脳に埋め込まれた電極に電気信号が送られる。既にアメリカ政府に認められ、主に老人の震えや、パーキンソン病などの運動障害の治療に使われている。
「脳深部刺激療法は最初は運動障害の治療に使われていたが、応用範囲が広がり強迫行為の治療にも使われるようになった」とThe BRAIN Initiative®のジョーン・ガイは言う。
脳深部刺激の強迫行為への応用はパーキンソン病に比べて難しい。
「パーキンソン病の場合、こわばりとか震えはその場で改善が見られるが、強迫行為では電気刺激の開始とその効果の現れには時間のずれがあり、数か月もかかることがある。研究では患者からのデーターをリモートで受信してその問題を克服した。脳深部刺激療法を受けるために患者は世界からやって来る」とサミーア・シースは言う。
強迫行為に共通するのは、ある一定の事物に対して病的に避ける傾向である。研究では、4-8 Hzから8-12 Hzの脳波が強迫行為ではどのように変化しているか調べた。そこで分かったのは、ほとんどの患者で腹側線条体が24時間周期で9
Hz の脳波を発生していたことだ。
「治療前には全ての患者に同様の波動が観察されたが、治療開始後、症状が改善するに従いこの脳波に個人差が現れた」とグッドマンは言う。
多くの強迫行為の患者では儀式的行為は変化せず、脳波にも違いが生じない。深部刺激を開始すると儀式行為に変化が現れ、脳波も多岐にわたった。今回の研究では、その改善を示す脳波の変化を捉えた。
「この知見を臨床に応用すれば脳深部刺激療法がより受けやすくなるし、他の心の病気の治療にも資するかも知れない」とプロベンザは言う。
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