鬱と反芻思考

2015年7月30日

鬱状態になると、人は自責の念に駆られ、過去を恥じ、不安な未来を取り留めもなく考え続ける。この思考癖を反芻思考と言うが、丁度、牛が食べた草の食い戻しをしながら休む姿からヒントを得ている。このパターンに入ると、思考はアリ地獄に入り、次第に現実が見えなくなり、歪んだ結論に帰着し、生活は行き詰まってしまう。

鬱状態の反芻思考現象は前から知られていたが、 Laureate Institute for Brain Researchのポール・ハミルトンと、スタンフォード大学の研究員が、この現象に焦点をあて研究を発表した。

彼等は既存の研究を調べた結果、脳の膝下前頭葉皮質と、デフォールト・モードネットワークと言われる回路が、鬱的内省に関係しているのを発見した。

デフォールト・モード・ネットワークとは、我々が作業を停止している時に自然に活動し始める回路であるが、鬱的反芻思考に入ると、膝下前頭葉皮質とデフォールト・モード・ネットワークが共振し始める。膝下前頭葉皮質とデフォールト・モードネットワークの共同作業が、鬱状態の反芻思考を作り出している証拠である。

「普通は、膝下前頭葉皮質がデフォールト・モード・ネットワークの協力を得て熟考し、重要な問題をかたずけることが出来るが、鬱状態では膝下前頭葉皮質が暴走し、通常の内省を超えてしまう。この理由により、医療に反応しない重度の鬱病の患者には、膝下前頭葉皮質に電気刺激して、回路を断ち切る処置が行われている」と”Biological Psychiatry”の編集者であるジョーン・クリスタルはコメントしている。



脳科学ニュース・インデックスへ