サッカー博士と摂食障害克服会議

1998年8月18日

今晩はようこそいらっしゃいました。今晩のテーマは摂食障害の克服です。今晩のゲストはアイラ・サッカー博士です。博士はニューヨークにあるブルックデール大学病院の摂食障害救助センターの創始者であり、良く知られている「痩せて死ぬ」「摂食障害の理解と克服」の本の著者でもあります。先生はまた色々なタイプの摂食障害すなわち拒食症、過食症、強迫的過食症について沢山の寄稿をあらわしています。私は司会のボッブ・マクミランです。この会議では摂食障害の克服を語るのみならず摂食障害に悩む女性の心理障害に関する最新の研究報告も紹介します。サッカー博士、今晩は私達のウェッブサイトの良くおこしくださいました。最初に先生の専門からお伺いしたいと思います。

サッカー博士:私は摂食障害の仕事について25年経ちます。この間に拒食症、過食症、拒食過食症等の患者を沢山治療して来ました。今は第二世代の摂食障害に我々は直面してます。

ボッブ・マクミラン:その事については後ほど話すことにして、今晩のタイトルは摂食障害の克服ですからまず軽快の意味を各摂食障害との関連で説明していただけますか。

サッカー博士:えーとそれは難しい質問ですね。何故なら我々は摂食障害の再発を何度も見てきていますから。軽快とは身長と体重のバランスが比較的普通で体脂肪が17%以上あり精神的には摂食障害の問題を比較的に良好に扱える状態を意味してます。

ボッブ・マクミラン:もし患者が体重は増加したがまだ摂食障害の行動をする時はどう判断しますか。治癒と軽快とは同じ意味ですか、それとも摂食障害には治癒はあり得ないのでしょうか。

サッカー博士:多くの摂食障害の人は依然として摂食障害の行動をとります。例えば体型を気にするとか。でも私は彼らを軽快と呼びます。

ボッブ・マクミラン:何がそんなに摂食障害の治療を困難にするのですか。

サッカー博士:摂食障害の要点は食事には無いのです。その基部に潜むものは自己コントロールの難しさ、自己嫌悪、鬱、強迫行為でありそれらが食事に摩り替えられて出てきているわけです。

ボッブ・マクミラン:
今参加された方にようこそいらっしゃいました。今夜はサッカー博士と摂食障害の克服と言う事で討議してます。所で先生、摂食障害を治そうとしている人がその過程で他の問題を解決しないといけないのですか。

サッカー博士:摂食障害はしばしば心に潜む圧倒するような感情から自分を守る形で現れます。拒食症や過食症では拒食したときあるいは暴食して吐いた時に脳内で麻薬様物質であるエンドルフィンが分泌されます。これが間違った満足感を与えるのです。これらの病気を治すためには患者は医者、栄養師、療法士からなるティームから治療を受けなければなりません。

ボッブ・マクミラン:先生の本のタイトルは摂食障害の克服ですから先生はどの方法がもっとも摂食障害を治すのに有効とお考えでしょうか。

サッカー博士:要点は患者との関係の構築です。病気を理解するのみならず患者とあるいはその家族と細部にわたる良好な関係を維持するのが大事と考えます。

ボッブ・マクミラン:それでは魔法のような療法あるいは一発で治す薬は無いと言う事でしょうか。軽快への要点は良い療法士を発見して患者と共に戦うと言う事でしょうか。

サッカー博士:認知行動療法とSSRI例えばプロザック、パクシルを組み合わせると暴食と嘔吐の繰り返しを押さえるのに効果があると言われてます。でもこれは魔法の療法ではありません。良い療法士を得ると言うのは買い物に出かけるみたいです。快い気分が味わえるのです。

ボッブ・マクミラン:ここで参加者の質問を紹介します。

参加者1:私は軽快とは摂食障害の行動を治療すると同時にそれを発生させる基本問題を治療する事だと思います。片一方だけ治すと言う訳には行きません。軽快とは調和の取れた行動と感情の癒しです。

参加者2:私は拒食症に苦しんで10年になります。だんだん不安が私を圧倒するようになって来てます。誰か助けてください。

サッカー博士:私の多くの患者は10年以上苦しんでいまして、しかも今回復の途上にあります。ポイントはもし今症状が悪化しても自分を苛むなと言う事です。きっと貴方はこの辺で他の療法士を探したほうが良いかも知れません。貴方にとって良い療法士は必ずしも充分訓練を受けた人で無いと言うことは往々にしてあります。

参加者3:私は今栄養士と経験のある療法士と援助グループの助けによって戦ってますが、一体我々摂食障害患者がこの基部に潜む恐ろしい感情すなわちこれが摂食障害を発生させる元ですがこの恐怖および不快な感情を克服できるのでしょうか。

サッカー博士:勿論貴方はその恐ろしい感情を克服できますよ。しかし軽快の過程にあってもやはり一般の痩せている人とご自分を比較しようとする気持ちは押さえられないでしょう。今の社会ではどうしてもそうなるのです。拒食症の人は余計です。

ボッブ・マクミラン:そうすると摂食障害的な行動と考えは決して消える事が無いという意味でしょうか。軽快の過程に入ると患者はある程度その感情をコントロールすることを学びその感情が何であるかを理解するようになるのでしょうか。

サッカー博士:そうです。

参加者4:先生の方法では患者の回復率はどの程度なのでしょうか。

サッカー博士:それに付いては何時も偏った報告があります。幸いにも我々のやり方で大変高い軽快率を示しています。しかし途中で治療を放棄した人に付いては分かる由もありません。我々は何時も患者を10年間に渡って見守ります。だから苦しくなったときは何時も戻ってきて再度治療を受けられるのです。

ボッブ・マクミラン:先生の本の中で沢山の摂食障害の人と語ってますが、回復が比較的簡単な人と難しい人との間に何か共通点みたいなものがありますか。

サッカー博士:早めに治る人は根本に横たわる問題を理解して摂食障害から離れても不安を感じないが治らない人の中には摂食障害に染まりきって摂食障害イコール全人格と言う人もいます。

参加者5:摂食障害を小さいときから発病する人と比較的人生の後期に発病する人では治り方に違いはありますか。

サッカー博士:遅くなって摂食障害を発病した人も観察すると発見されなかっただけで摂食障害を子供の頃から起こしている場合が多いので結果的に多くの人が長年にわたって患っている事になります。しかし早めに、若いうちに診断を受ければそれだけ予後が良いです。

参加者6:先生、患者が回復努力をする過程で摂食障害が他の問題にすり返られることがありませんか。例えば麻薬だとかアルコールの中毒に置きかえられるような。

サッカー博士:過食症はその傾向がありますが拒食症はそう言うことはありません。

参加者7:それには賛成出来ません。私は25年の人生で15年間拒食症でした。去年まで私は麻薬中毒でした。

参加者8:療法の中でも治療効果の高いものはありませんか。

サッカー博士:従来の心理療法より相互作用療法が効果があります。

参加者8:その相互作用療法てどう。言うものですか。

サッカー博士:相互作用療法とは認知行動療法と患者と療法士とが相互に影響を及ぼし合う療法を混ぜたものです。相互に影響とは何故かと原因を追求するより患者のプラスの面に焦点を絞って患者と療法士が直接影響を与え合うやり方です。

ボッブ・マクミラン:今晩この機会に是非述べたいと思いますのは子供を持つ場合自分の摂食障害を子供に移してしまわないかです。あり得ますか先生。もし可能性があるのなら治ってない人がどうやって防ぐ事が出来ますか。

サッカー博士:最近の研究によると可能性があります。遺伝子、生化学、環境等が子供に影響を与える事が考えられます。私としては先生の役割すなわち摂食障害の行動が子供にその真似をさせると理解したいと思います。最近は本当に5歳や6歳の子供の摂食障害を見る事が多くその母親は摂食障害を診断もされたことなく治療した事も無いのです。

ボッブ・マクミラン:摂食障害が治ってなくしかも子供に摂食障害を起こしたくないならば我々はどうしたら良いでしょうか。

サッカー博士:今我々のプログラムの中に予防と言う分野の仕事を始めています。発病前なら治療は必要無いのですが、この目的の為に家族全体として治療されなければならないのです。小学校のレベルでもマスコミや社会の影響が見られ、幼稚園あるいはその前の子供にも体型を心配する傾向が見られ他人と比較したりします。我々は今小学校に模擬の調査のプロジェクトを開始してます。

ボッブ・マクミラン:最近の研究では摂食障害を持つ女性の家族には摂食障害関連の病気が発生しやすく、そうでない女性の家族より2倍から30倍の高さで鬱病、不安症、強迫行為、摂食障害が現れると報告されてます。

サッカー博士:それは事実です。

ボッブ・マクミラン:報告では拒食症の家族では対人恐怖や強迫行為がそうでない人の家族より発生しやすく過食症の家族ではアルコール中毒や麻薬中毒が出易いと言っております。これは大変ショッキングなレポートで私としては親としてもし自分が摂食障害を患っていたとしたら、どうして子供に同じ苦しみをさせないか真剣に考えるわけです。

サッカー博士:確かにこの事は事実として認識してます。同じ結果を報告している他の研究グループにも連絡を取っている所です。まず第一として貴方は自分の摂食障害を解決しないといけません。摂食障害的な生き方を改めると子供もそれを改めます。あるがままの子供の事実を認めましょう。もし子供に摂食障害の兆候を発見したらすぐ専門家に見せましょう。

参加者9:私が拒食症だから妹は摂食障害になりやすいと言う意味でしょうか。

サッカー博士:
そうかもしれません。何時もそうであるとは限りません。しかし罪の意識を持たないで下さい。ただ家庭の中で食事の事を余り取り上げないほうが良いですね。

参加者10:
私は一対一の療法、グループセラピーの両方を受けましたが思わしくありません。今はパクシルを飲んでいましてお陰様で気持ちは大分良くなって来ました。自力で治す良い方法は何か無いでしょうか。

サッカー博士:摂食障害は一人で治すのが難しいです。新しいセラピストを探す事をお薦めします。

参加者11:先生は過食症に付いては薬を述べられましたが拒食症に付いてはどうでしょうか、何か良い薬はありませんか。

サッカー博士:拒食症の患者の多くは強迫行為も認められます。ですからラボックス、プロザックがある程度効果があります。もし鬱が潜んでいるなら他のSSRIも効果があるでしょう。

ボッブ・マクミラン:サッカー博士は皆さんご存知のようにブルックデール大学病院のHEED(摂食障害を終わらせるための救助組織)の創設者です。先生、そのHEEDに付いて少し説明していただけませんか。

サッカー博士:HEEDは非営利組織で摂食障害の為の予防、教育、照会、診断、治療を目的としてます。将来はHEED HOMEというものを作って患者のホームにしたいと思ってます。すなわち病院と家の中間の位置でそこに悩んでいる人が行くのです。寄付を募っていますのでよろしくお願いします。

参加者12:私は拒食症、過食症を患って回復してから2年になりますがまだ自分の体のイメージに苦しんでいます。この体のイメージを専門に扱っている人を探しているのですが、見つかりません。少なくても私がすんでいるナッシュビルにはいません。専門家と言う人はいるのでしょうか。いるのならどうして探すのでしょうか。

サッカー博士:栄養士や摂食障害の専門家は体のイメージについても知識を持っています。私のところに電話していただければ貴方の近所の専門家を紹介します。

参加者13:摂食障害は強迫行為と関係あるのでしょうか。

サッカー博士:強迫行為は色々のタイプの摂食障害を同時に持っているものです。

参加者14:私は強迫行為と対人恐怖でものすごく悩んでいます。これらの症状が大嫌いなのですが治っているなんて自分に嘘をついているかどうかはどうして判断しますか。

ボッブ・マクミラン:摂食障害の人はご自分の間違った体のイメージを持っている場合、体ばかりでなく他の事も間違ったイメージを持っていると考えた方が良さそうです。もし貴方が本当に治っているのならどうして治ったと自分に嘘をついているなんて考えるのでしょうか。

サッカー博士:回復へのプロセスの一部に自分の感覚を信じるプロセスがあります。そして自分の周りの他の人の存在に気がつきます。もし貴方が自分を受け入れ始めているならば貴方は真の回復過程に入っています。

参加者15:激しく長く患っている摂食障害の患者を治療した事がありますか。私は今途方にくれてます。もし治ったケースがあるなら教えてください。

サッカー博士:長い症例の治癒例があります。我々のサイトを訪れてください。

参加者16:過食症ですが過食して不安から逃れるとは一体人間のどんな感情なのでしょうか。

サッカー博士:人間の感情ばかりでなく頭の中に起こる生化学的な反応なのです。我々は次第に患者が化学的にバランスが狂っているのを発見してます。これらの多くが栄養を調節したり、薬の投与により改善されてます。

ボッブ・マクミラン:最後に先生に一つだけ質問があります。摂食障害は自力で専門家の手を借りずに脱出出来るものでしょうか。
それともそれは殆ど不可能な事でしょうか。

サッカー博士:患者の中には深部に潜む問題を解決せずに摂食障害を取り去る人もいますが、それゆえに何年か後に再発する事があるしあるいは他の強迫的行為に走る事があります。

ボッブ・マクミラン:皆さん今夜のインターネット会議に出席していただき有難うございました。サッカー博士には遅くまで付き合って頂き多くの質問に答えられまして大変有難うございました。

サッカー博士:皆さんの多大な関心に感謝申し上げます。


脳科学ニュース・インデックスへ