ドーパミン解毒

2023年6月2日


もし貴方がぼんやりしているのが苦痛に感じたり、日常の雑務も鬱陶しかったりしたら、そろそろ「ドーパミン解毒」をした方が良いかも知れない。
ドーパミン解毒とは日常スマホを見過ぎている人が、数日から一週間スマホを見ない生活をすることで、スマホに過剰に反応していた脳を冷やし、脳の報酬回路を元に戻す作業です。薬物依存症の治療のような印象を受けますが、むしろ日常の簡単な誘惑に負けない新しい生き方を発見する行動です。

脳内でドーパミンの役割
ドーパミンとは人が快楽を感じた時に分泌される神経伝達物質で、スマホを見る時にも分泌される。それを解毒をするとは、スマホ見過ぎで過剰分泌されるドーパミンを抑え、バランスの取れた元の状態に戻すわけです。もちろん神経伝達物質だけで説明できるものではないですが、何が自分の悪い癖の引き金になっているかが分かるだけでも十分価値があると、スタンフォード大学のアナ・レンブケは言う。

耽溺の時代に節度
「われわれはスマホを見ると脳の報酬回路が活発化する。ツイッターの”いいね”の返事を見ただけでも興奮を覚えるのがそれです。報酬回路は適度に興奮するとわれわれの生活の有力な武器になるが、過剰になると薬物依存症のようになり、回路がスマホに乗っ取られてしまう 」とレンブケは言う。
「これを避けるためにドーパミン分泌を元の基準点に戻したい。でもいきなり刺激を取り去ると、それが鬱状態とか不安を起こすのです。副作用を起こさないように上手にスマホ使用をコントロールするのがドーパミン解毒の目的です」とレンブケは言う。

解毒の意味
解毒とは体内から危険な物質を取り除く事ですが、ドーパミンは決して体内から取り除く物質ではない。解毒とは、人が依存しているスマホの使い過ぎを止めると言う意味です。「人がドーパミン解毒をする事により、新しい自分を発見するのは素晴らしいと思う」とレンブケは言う。

スマホ使用を一時中断すると解答は思わぬ方向から来る。レンブケの場合はスマホではなくて恋愛小説多読であった。彼女の場合、小説の筋の転換点を推測しようとして脳の報酬回路を過剰刺激していた。

早速、関連読書を止めるが、4週間経ってもその渇望が冷めない。そこで自身の癖を反省すると、原因はポップミュージックを聞くにあると分かった。何故なら歌の多くはラブソングだからだ。そこでポップミュージックを聞くのを止めたら読書癖も同時に消えた。今は、歌を聞いても恋愛小説を読みたい衝動が起こらなくなりましたとレンブケは言う。

スマホ断食で何が起きるか。
悪い癖を突如止めたらどうなるかの情報はあまりなく、臨床経験だけですとレンブケは言う。「スマホ中毒になっている人がスマホ止めると、10日から14日間はおかしくなります。以後徐々に回復し、散歩とか食事の用意ができるようになります」と彼女は言う。
「スマホ断食をどのくらいやれば良いかの数字はない。大事なのは、それをした時に何が起こるかに注目することです」とレンブケは言う。



脳科学ニュース・インデックスへ