夢と鬱病
 

2001年4月13日

最近の科学報告では、もし鬱病の人が貴方の家族にある場合は、貴方のレム睡眠に入る時間が早めである可能性を示しています。

眠りに入ってから60分以内に夢を見る人は、1時間半位で夢を見始める人に比べて2倍の確率で鬱病が発生する事が分かった。これは1人の鬱病患者がいる家族を調べて、その家族のメンバーで夢を見始める時間を比較して分かった事実です。この発見で、鬱病を発生させる脳内の化学物質の発見に役立つであろう。ただしもし貴方の家族に鬱病の人がいなければ、この夢を見始める時間と貴方の鬱病の関係は意味がありませんので、心配する必要がない。

ニューヨークにあるロチェスター大学の精神医学と神経学の教授であるドナ・ジャイル博士は「レム睡眠が早く起きる現象は、鬱病を発病する前に最初に現れる候で、今まで鬱病を患った事が無い人にも当てはまります。レム睡眠に入るまでの時間が短い人でその人の家族に鬱病がいる場合は、鬱病になる確立が2倍に上がります。」と言う。

夢睡眠(REM: Rapid Eye Movement)は、我々が毎晩睡眠する時に脳が通過する5つ活動形態の内の1つですが。脳が最初の4段階の眠り水準を通過する時、レム睡眠では脳はあたかも我々が起きているときのように活発に活動する。「鬱病の人は睡眠問題を抱えておりそれは寝過ぎるか、寝入るのが難しいかであるが、レム睡眠に入るのが早過ぎる現象をはっきり認めるのが難しかった」とジャイル博士は言う。

ジャイル博士等は70家族の352人について調べた。その内50家族は少なくても1人の鬱病患者を抱えていた。研究室で彼等の睡眠パターンを調べ、特にレム睡眠に入る時間に注意を注いだ。

「この研究は1985年以来引き続き行われているものです。特に1970年代に活発に行われた研究の結果、分かったのは鬱病患者ではレム睡眠に入る時間が早い傾向です。我々は鬱病患者の家族メンバーで、そのような早くレム睡眠に入る人が、鬱病になる確率が高いと言う仮定が成り立つかどうかを研究して来ました」とジャイル氏は言う。

脳内化学物質である神経伝達物質のアセチルコリンが、この正常でない眠りパターンに関わっているのではないかと博士は見ている。「コリン作用システムがレム睡眠を引き起こします。コリン作用に感受性が高い人、即ちアセチルコリン受容体を多く持つ人が鬱的気分を起こしやすい事が分かっている。我々はコリン作用システムが常に鬱病と関連があるとは言わないが、我々が調べたレム睡眠が早く始まる家族では、コリン作用システムが実際鬱病の弾きがねになっていると我々は確信する」と博士は述べる。コリン作用システムは神経細胞あるいは繊維から出来ておりアセチルコリンを神経伝達物質として使う。

アメリカでは18歳以上の成人の内9.5%に当たる1800万人の人が毎年鬱病になるか鬱状態を経験していると精神衛生財団が発表している。その内女性の患者は男性の2倍程である。

メリルランドのベテスダにある、精神衛生財団の臨床精神生物学の主任研究員であるトーマス氏は「レム睡眠に入るのが短い傾向は何も鬱病だけではありません。変則的睡眠パターンは分裂病や睡眠発作病の患者にも見られる」と言う。

ジャイル博士の次ぎのステップは、アリセプトと言う薬を使用して、被験者のアセチルコリンを活発にさせて、睡眠パターンを調べる事です。アリセプトはアルツハイマー患者の記憶喪失を食い止め、睡眠パターンを変える薬で、東京にあるエイザイとニューヨークにあるファイザー社が共同開発したものです。

「もしレム睡眠に早く入る人達がアセチルコリンに敏感な人達なら、この物質が鬱病の発生に重要な役割をしている事になる」とジャイルは言う。



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