禁酒が感情認識脳に打撃を与えるかも知れないという報告
2002年3月5日
英国サセックス大学研究チームからの報告によると、アル中患者で禁酒を何回か試みてしかも失敗した人では禁酒の試みが感情認識脳に障害を起こしているらしい。

実験では色々の感情を示す顔写真を被験者に見せてその反応を調べた。アル中でないグループあるいはアル中でも禁酒を試みた事が無いグループとアル中患者で以前禁酒を試みたグループに分けて実験をした所、アル中患者で以前禁酒を試みたグループでは顔の表情から不安や悲しさを読み取る傾向があった。

実験心理学のセオドアデュカ博士とそのグループが発表したこの研究はアル中患者治療に多くの示唆を提供するものと思われる。

「リハビリに失敗すると患者と共に我々は混乱を向える事になりますが、問題は患者が人の表情を間違って解釈していたり、過剰反応していたりすることなのです。これが結果として患者の取り巻く環境を悪化させ、治療を難くしているのです」とデュカ博士は言う。

感情を分析する脳の部分は扁桃体と呼ばれている。今までの動物実験から分かっているのは、度々アルコールの禁断症状を経験している動物では扁桃体の機能に障害が発生している。この結果から禁断症状を経験しているアル中患者では扁桃体に障害が起きて、正しく感情を読み取る事が出来なくなっている可能性がある。

研究ではアル中患者では一般的に怒りの表情を嫌悪の表情に取り違える混乱を発見している。感情の認識は脳幹と前頭葉の一部であるオルビトフロンタルコルテックスと呼ばれる部分で行われていると見られている。しかしこの混乱の原因は禁断症状の回数と言うより長いアルコール飲酒の結果による症状と思われる。

研究はロンドンクリニックに入院しているアル中患者15人の協力を得て行われた。患者は実験中には禁酒させられた。全員が入院してから2週間以上たち、その間標準的禁酒治療が与えられていた。実験が始まる前の1週間は全員が全ての薬を取らないように命じられている。

実験対照グループとして選ばれた社交的に飲む健康グループ15人はサセックス大学の学院生と大学職員から構成されていた。



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