妊婦のインフルエンザ感染と躁鬱病

2013年5月13日

妊娠女性がインフルエンザにかかると、その子供が躁鬱病になるリスクが感染しない場合に比べて4倍ほど高まるのが分かった。この発表により、今まで指摘されていた統合失調症との関連性がより高まった。統合失調症もその発症原因に出産前のインフルエンザ感染が疑われている。

「赤ちゃんを予定している主婦は、インフルエンザ予防の注射を受けるべきであり、人ごみを避けた方が良い。国民に予防注射を促しているが、進んで受ける人は少ない。今回の発表からも、予防注射の利益はそのリスクを上回る」とコロンビア大学のアラン・ブラウン氏は言う。

今までも、妊娠女性のインフルエンザ感染と躁鬱病の関連を指摘した報告があった。今回は、同じ健康保険に加盟している人達から選び出し、体系化した診断方法で追跡調査した初めての報告になる。この研究では、カイザー・パーマネンテ・ヘルスケアー機構のデーターベースを使っているので、以前より広範に詳しく調べることができた。

1959年から1966年に、北カリフォルニア郡で生まれた子供全員の約3分の1の中で、92人が後に躁鬱病を発症している。その発症した人と発症していない722人を比べて、妊娠時のインフルエンザ感染の影響を調べた。

結果は妊娠時のどの時点でも、インフルエンザ感染は躁鬱病発症リスクを4倍高かめていた。特に妊娠第2期、第3期に上昇している。精神症状をもつ亜種の躁鬱病については6倍の発症率であった。この研究の前にも、ブラウン等が同じ北カリフォルニア郡のサンプルで調べていて、インフルエンザ感染による統合失調症発症リスクは、妊娠上半期で3倍であった。自閉症も同様に、妊娠最初の3ヶ月期のウイルス感染による影響が指摘されている。

「ウイルス感染が出産前のどの時期に、胎児の脳に如何なる影響を与えるのか。何故、同じ環境リスクが違った精神障害を起すのかが今後の研究課題だ」とブラウンは言う。

躁鬱病と統合失調症は似ているところがあり、思春期に症状が現れ、発症遺伝子が存在し、遺伝性が指摘され、患者の数は人口の1%で、精神症状を示し、抗精神薬に反応する。
次第に2つの病気に関連性があることが分かり、それを調べるために、”研究領域基準プロジェクト”が発足した。このプロジェクトでは、脳回路を調べて従来の診断基準を横断する新しい精神病分類システムを構築する。


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