腸内細菌と摂食障害

2024年6月26日

過食症の人の腸には特有なバクテリアが住み着いているらしい。

最近Gut誌に掲載された研究によると、過食症の人及びマウスでは、腸内にプロテオバクテリアと呼ばれる細菌が多く、アクチノバクテリアと呼ばれる細菌が少ないのが分かった。

「過食症とは食事の量をコントロール出来ない病気で、肥満や他の摂食障害の原因にもなりうる。過食症の発症には幾つかの要因が考えられるが、今の所原因は分かっていない」とポンペウファブラ大学のエレーナ・マーチン・ガルシアは言う。

過食症とは行動異常の一種で、薬物依存症に似ていて良くないと分かっていても強迫的に食物摂取が止められない症状です。まだ「精神障害の診断と統計マニュアル第 5 版」に取り上げられていないので、存在自体が論争の対象でもある。

研究では人にはイエール食事依存症表による35の質問をし、マウスでは餌の追求の様子から過食症を判断した。腸内細菌叢を調べると、人もマウスも過食症ではプロテオバクテリアの数が多く、アクチノバクテリアとブラウティアの数が少なかった。

「初めて腸内の細菌叢が脳の遺伝子表現を変化させているのが分かった。これが将来の新しい治療法に結び付くのではないか」とマーチンガルシアは言う。

研究でマウスの腸内のブラウティアの数を増やしたところ、劇的に食事癖が変化した。

「人間もマウスも、ある種のバクテリアが過食症の原因になっているらしい。腸内のブラウティアの数を増やす目的で難消化性のオリゴ糖とラムノースをマウスに飲ませると、過食症が改善した。そのマウスの糞には大量のブラウティアが繁殖していたた。ブラウティアの一種であるBlautia wexleraeをマウスに経口投与しても同じ効果があった」とマーチンガルシアは言う。

「強迫的にカロリーの高い食べ物を食べていると摂食障害や肥満になると一般的に考えられていて、食事依存症があるかどうかは意見の分かれるところです。しかしこの結果、ある種の細菌が食物依存症を引き起こしているのが分かった」とアイルランドのコーク大学のハリエット・シュレッケンは語る。



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