拒食症遺伝子 |
2001年10月8日 BBCニューズから |
最新の研究によると拒食症は心理で説明できる病気ではないかも知れない。オランダの研究者は145例の拒食症患者の遺伝子DNAを調べた。結果はその内の11%の人が同じ遺伝子の変異を起こしていた。拒食症が遺伝子が関連して発症しているとすると新しい治療薬の開発へとつながる可能性がある。 拒食症患者は自分が太っていると勘違いして食事を拒否する。患者の約20%が死に至ると言われている。女子に多く、通常思春期の始めに起きやすい。わずか患者の30%しか拒食症が完全に治らない。多くの専門家は女子は余り太るべきで無いと言う社会的、心理的圧力が拒食症を起こしているのではと考えている。 やせ細った理想モデル 多くは痩せているファッションモデルを非難したり、ハリウッドの女性モデルが現実的でないと言う。しかし拒食症はどうも遺伝子に由来しているのでは無いかと言う証拠が出始めている。 拒食症になる確率は一般では200分の1である。しかし家族に拒食症の患者がいる場合その確率は30分の1に上がる。双子の研究によると双子の片方が拒食症になるともう一方が拒食症になる確立は50%である。 アメリカの研究者は今マウスを使って摂食障害の研究をしている。このマウスは太っているだけでなく、黄色身を帯びている。1994年にアゴウチと呼ばれる重要な役割をする蛋白質をつきとめた。アゴウチ蛋白は皮膚にあり、色素を作る役割をしている。しかしアゴウチ蛋白に近いAgRP(アゴウチ関連タンパク質)と言う物質は脳にも存在していて、食欲を刺激する役割をしている。 AgRPが多すぎると大食になる。ユトレヒト大学ルドルフマグナス研究所のロジャー・アダン博士のグループはAgRPが少な過ぎると拒食症になるのではと考えテストをしている。 145人の患者から採取した血液から患者の内16人がAgRPを作る遺伝子が変異しているのが判明した。「我々は拒食症の原因を突き止めてはいないが、かなり確度の高い関連を発見した」とアダン博士は言う。アダン博士等はユトレヒト大学の小児精神科医であり摂食障害の責任者であるアンネマリーファンエルバーグ氏と共同研究をしている。 「この研究によると遺伝子変異体を持つ人が体重が減少すると遺伝子欠陥の活性化の引金を引く事になる。しかしこれが正しいかどうかは更なる研究が必要である」と彼女は述べている。次ぎの研究は拒食症患者の親は果たして子供と同じ遺伝子変異体を持つかどうかである。 拒食症は今の所治療法は無いとファンエルバーグ氏は言う。「拒食症患者の多くはは心理療法を受けて食事をして体重を増やすように勧められる。体重を増やせば心にも変化がおとずれるであろう。しかし拒食症が単に心理の問題でなく、遺伝子がかかわる問題であると分かると新しい薬への研究に道が開けてくる」と述べている。 摂食障害協会では拒食症は他の摂食障害と同じように、多くの複雑な要素が絡んで発症しているであろうと述べている。 この研究結果は分子精神医学誌に掲載されたものである。 脳科学ニュース・インデックスへ |