遺伝子変異体とアルコール中毒および鬱病の関係

2001年7月15日

アメリカの科学者が最近アルコール中毒や鬱病にかかり易くさせる遺伝子を発見した。この発見によりある人が将来これらの症状にかかるかどうか判断し易くなり、新しい治療薬の発見に導くと期待されている。

「第一染色体にアルコール中毒あるいは情緒障害を起こすであろう因子を発見した。この染色体部位の遺伝子変異体はある人に将来アルコール中毒を起こす可能性があり、他の人には鬱病を起こすかも知れない」とインディアナ大学医学センターの精神医学研究所の責任者であるジョーン・ナーンバーガー博士は言う。

細胞の中にある核、その中にあるこの棒のような形をした染色体は人の遺伝形質を決める情報が詰っている。「発見された単一あるいは複数遺伝子がすぐアル中又は鬱病を起こすわけではないがその危険性を高める。病気の発生は遺伝子面と環境面の両方が影響している」と博士は言う。

この研究はアメリカ精神医学雑誌の最近号に掲載された。

ナーンバーグ博士達は「アル中遺伝学共同研究」から得られたデータを分析した。この研究は現在行われている最中で、6つのアメリカの研究センターがアル中を多く出している家族から987人を選び臨床的生物学的データを集めて研究している。博士は「今回の研究はアル中、鬱病理解への大きなステップではあるがまだまだ分からない事がある。発見した遺伝子が一体どう言う性格のものであるか分かっていない」と述べている。

「我々は可能性を発見しているが、どうしたら治療に結びつくかが分かっていない。何故なら生化学的経路がわかっていないからです。今度の発見は遺伝子が重なり合って働く例を示しています。この種の発見は研究をすればするほど出てくるのです。あるカテゴリーと他のカテゴリーが重なり合っているように見え、カテゴリーそのものも必ずしも明確に定義されていない。これ以外にもある遺伝子が他の多くの病気にも同時に関わっている例があります。難しいのは1つの病気が多くの遺伝子の共同作業であるらしいのです。だから大変難しい」とナーンバーグ博士は述べている。

「今回の発見は凄いと思う。何故なら我々は臨床的にアル中や鬱病は人により、なり易い傾向があるのを見ているからです。我々が今まで感じていた事をこの研究が裏付けています。恐らくこれが新しい治療法の発見につながるでしょう。まだかなり先の話ですが、少なくても取っ掛かりはつかんだのです」とアメリカ依存症精神医学連盟会議議長であるリチャード・スキンスキー氏は述べている。



脳科学ニュース・インデックスへ