拒食症と代謝異常の関係

2020年9月6日
The National Institute of Mental Health
食事を拒否し劇やせする拒食症は、死もあり得る深刻な心の病気です。治療は主に心の部分に焦点をあてるが、今の所、結果は満足行くものではない。
今回の研究で、拒食症を引き起こす遺伝子変異は、代謝にも重要な役割をしているのが分かった。

研究では、ゲノムの中の遺伝子座と呼ばれる部位の一塩基多型変異を調査した。ブリーク等は、8つの遺伝子座で拒食症を起こすであろう変異を発見した。興味深いのは、拒食症遺伝子変異は他の心の病気を引き起こす遺伝子変異と似ていた事と、代謝に影響を与えている事であった。

拒食症に関連する一塩基多型変異は、強迫行為や鬱病、不安症、統合失調症と似ていた。これは臨床観察や疫学調査とも一致している。彼らは、不安症、鬱病を併発し易い傾向にもあるのだ。また、遺伝子変異は、体脂肪を少なくし、肥満度を下げると同時に、肉体運動を活発にする遺伝子変異でもあった。

拒食症遺伝子は、インシュリン抵抗性、空腹時インスリン値に関連する遺伝子や、2型糖尿病を引き起こす遺伝子と似ていた。例えば、2型糖尿病のリスクを下げる遺伝子は、拒食症の発症のリスクを上げていた。

これ等の結果から、拒食症を引き起こす遺伝子変異は、体の代謝にも影響を与えているのが分かった。
拒食症の患者は十分な食事をしても、健康的肥満度の維持が難しい場合が多い。ここからも遺伝子による代謝異常が考えられる。
以上から、拒食症の治療には心の治療ばかりでなく、代謝の部分にも注意を払う必要がありそうだ。



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