2020年11月4日 |
誰でも心配性の人を身の回りに一人二人発見するでしょう。 テレビドラマの”フレンド”に登場するモニカ、そして”サインフィールド”のジョージがそのタイプだ。心配性の人は何時も心配しているし、心配していないと逆に心配になる人たちだ。 人が心配性であるかないかを調べるには質問表を使う。質問に対して心配事が絶えずある、何時もビクビクしていると答えれば、貴方は心配性と判断される。このような性格はテレビドラマの主人公には向いているが、生活を楽しむには難しい。もしこの性向が有害と言うなら、心配症の人は長生きが難しい事になる。 20年も前に、カリフォルニア大学リバーサイド校のハワード・フリードマンは、心配性有害論に異議を唱えた。 「心配性は今まで批判されて来たが、むしろ彼等は健康で長生きすると思う」と彼は言う。そこで、どちらが正しいか調べ始めた。 「不安があまり強いと生活にブレーキがかかるが、適度な不安はむしろ危険を避ける上で重要な手段である」とフリードマンは言う。 性格と寿命との関係は、多くの要素が絡み合ってこうとは言い切れないが、現在のコロナパンデミックの時代には心配性は有利に働くはずだ。 炎症反応 心と身体の関係を調べるために、炎症を考えて見よう。 ウェストバージニア大学のニコラス・ツリアーノによれば、病気やケガをすると、体は炎症誘発物質を生産するため、その炎症誘発物質により患部は赤く腫れあがる。腫れあがった患部は細菌に対して戦いを開始し、傷んだ組織を修復する。 炎症誘発物質は喫煙、飲酒、過食、運動不足でも生産される。だからそのまま漫然と放っておくと、炎症は組織を破壊し始め、リュウマチ、糖尿病、癌、心臓病、アルツハイマー病の原因になり得る。即ち炎症誘発物質があると言う事は体に何等かの不調があることを意味する。 人の性格が果たして病気のリスクを高めるかどうかを知るために、ツリアーノは、1000人の中年の人たちを定期的に健康診断して炎症誘発物質を調べた。その結果分かったのは、我々の思いとは逆に、心配性の人はそうでない人より炎症のレベルが低かったことだ。 ツリアーノは理由として、心配性の人は日常的に健康に注意するから、肥満を予防し、健康リスクが少なくなると言う。ブランディーズ大学のミージャム・スティーガーは、心配性の人は禁煙をし、より運動を心がけていると言う。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツから得られたデーターも、それを支持している。 よく適応 今のパンデミックの状況下で、心配性は果たして有効だろうか。3月にアメリカ政府は国家非常事態を出したが、その後の調査によると、心配性の人は漫然としていた人より驚くほどパニックから早く回復して、適応が早かったと言う。強い警戒心、心配は緊急事態に向いていると言う事だろう。彼等は慎重に行動し、手を洗い、マスクをかけ、人との距離を保つ。 「過剰な心配は避けたいが、強めの心配は決して悪い事ではない」とフリードマンは言う。 心配性をうまく利用する 心配性と寿命の関係は議論のある所だが、オレゴン大学のサラ・ウェストンによれば、心配性の人が一般の人より長生きするデーターはないと言う。 「心配性の人は健康的な生き方をするだろうが、彼らは心理的にストレスを受けやすいから、心臓に負担がかかって寿命を差し引くのではないか」と反論する。 自分が心配性であると懸念している人は、心配とは何かをもう一度考える必要がある。近年の研究によると、不安はそれをどう捉えるかにより影響が違って来る。もし、不安が余り強くて生活に支障が出るようだと長期的にはマイナスの影響を受けるが、不安があるからこそ問題を解決しようと決意が強まるとも言える。 フリードマンは、人の性格についてはその微妙な差異を認めるべきと考えている。「心配性をストレスと同じレベルで考えるのは間違いだろう。特にコロナの昨今では、過剰に心配して当然だ」と彼は言う。今こそ不安、心配性を再評価すべきだろう。 脳科学ニュース・インデックスへ |