思春期に発症する心の病


 アメリカ国立精神衛生研究所 科学ニュースより
2014年5月20日

アメリカ国立精神衛生研究所の発表によると、脳の外側を覆う脳皮質の厚さは、子供から思春期に至る過程で遺伝子の影響を受けることが分かった。脳皮質は進化の過程でより後期に獲得した部分であり、人間の脳の成長でもより遅く成長する部分でもある。

「皮質の厚さの変化は遺伝に影響され、子供の後期から思春期に現れる。特に人間に特有な言語に関するエリアと、思考に関するエリアが遺伝に影響される。この脳は心の病にも関係していて、心の病の多くは思春期に現れるのに一致する。我々の研究は、遺伝と環境と年齢の相互関係を明らかにしている」とアメリカ国立精神衛生研究所のジェイ・ギード研究官は言う。

ギード等は、2014年4月の”the journal Proceedings of the National Academy of Sciences”誌に研究を発表した。

研究は、子供から10代後半までの人を対象に、MRIスキャンで広範に調査をした。その結果、遺伝の影響による脳皮質の変化、年齢による遺伝子の変化の様子が分かった。
前頭葉、側頭葉、頭頂葉等が、遺伝の影響を受けると言う考えは、アメリカ国立精神衛生研究所の以前の研究でも明らかになっていた。しかし、以前の研究では対象の数が少なく、脳の成長過程の2か所だけの調査であった。

ギード等は、792組の双子とその兄弟を、成長過程の8時点でMRI検査し、1,748 の写真から82,000箇所の皮質の厚さを測定した。

遺伝の影響で脳皮質の厚さが変化するのは思春期までで、思春期以後は遺伝子の影響が減る。環境が及ぼす影響は、既に子供のころに消滅し、性差の影響は少ない。

局部的には違いがあるが、脳の厚さの変化は、後頭部から前頭部に伝わる。これは、アメリカ国立精神衛生研究所が10年前に報告した、灰白質の密度の成熟の様子と同じであった。
この脳の変化の様子は”発達中の人間脳の地図”の研究とも一致する。


写真上
脳皮質は成長に合わせて次第に遺伝の影響を受ける(赤)。影響が最も現れるのは思春期後半で、心の病が発症する時期に一致する。
写真下
対照的に遺伝子の変化(赤)は年齢と共に減少し、後頭部から前頭部に移動しながら減少する様子が見える。
提供:ジェイ・ギード、アメリカ国立精神衛生研究所、小児精神科部門




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