内向性は勝てなかった

2021年7月7日
By David Robson
BBC Worklife

一般にパンデミックは鬱鬱としたもので、多くの人は早く抜け出したいと思っているが、ここにパンデミック歓迎と言う人もいて、彼等はどんなタイプの人たちだろうか。

作家であるジョン・ロンソンが「内向的性格の人には社交性の制限は全然問題にならない。心配なのは外向的性格の人で、彼等には社交の制限は苦しいであろう。」と2020年3月20日のBBCニュースナイトで語っている。

多くの人もロンソンと同じ考えではないか。株式専門のブルムバーグも、ロックダウンは内向的性格の人には好都合と言っている。ロイターも同じ論調だ。オーストラリアのデイリーテレグラフは、「広い観点から見るべき」とむしろ内向性擁護の社会の姿勢に批判的に書いていた。

本当に内向性の人にはロックダウンは問題ないのか。実際は反対であって、専門家の調査では、内向的性格の人の方が外向的性格の人より内にこもる生活に打撃を受けていた。

内に向かう心

専門家は人の性格を判断する時、次の5つの質問で内向外向を判断する。
最初の二つの問いは
  • 会合では出来るだけ背後にいたいと思いますか。
  • 友人は自分の知っている範囲だけにとどめますか。
残りの3つの問いは
  • 人の集まりにはより参加したいですか。
  • 自分は呑気なタイプと思っていますか。
  • 人と悪ふざけして遊びたいですか。
最初の二つに同意して次の3つに同意しない場合、貴方は内向性と判断出来る。その反対は外向性で、私の場合、両方の傾向があるので中立になる。注意しないとならないのは、内向は必ずしも恥ずかしがり屋ではないと言う事である。内向性の人は、一人でいる方が安心するのに対して、外向性の人は人と接している方が楽しい。

以上から、内向性の人にはロックダウン環境は何ら不都合ではないはずであるが、実際は違っていた。内向性の人はちょっとした刺激で感情が不安定化しやすく、コントロールが難しい。従って新しい環境にも順応し難い。突然のパンデミック環境で彼らは困っているのかも知れない。

ロックダウン下では人を避けても不自然ではないし、社交に使う時間も大いに節約できる。しかし「人との結びつきは人間の本能で、内向性だからと言って極端に減らして良い事はない」とスイス・ベルン大学のダニエル・グブラとカーシャ・シュリーゲルは言う。

内向性の有利性は見られず

グブラとシュリーゲルは、2020年の3月から4月に、466名の参加者を募ってオンラインで性格とパンデミック下の心の健康度を測定した。昨年の暮れに出版された論文では外向、内向に関わらず、孤独、不安、鬱を経験していた。

オーストラリア・ウォロンゴン大学のマリアン・ウェイも、114人の参加者を得て、2020年の4月と5月にテストをした。その結果は大方の予想を裏切り、内向性の人は際立ってロックダウン下の心の健康の維持が良くなく、より強い孤独、不安、鬱を経験していた。


アルバータ大学のアナヒタ・ショックルコンが行ったテストでも同じ結果が得られた。ここでは2020年の6月、7月に1000人のカナダ人に参加してもらい、ロックダウン下の心の健康度を調査した。彼女のテストでは、外向性の人は社交を制限されても心の健康の維持で良い成績を出していた。

ショックルコンは、外向性の人はパンデミックが始まる前から友人の層が厚く、これを利用してオンラインでトークを楽しんだりして活動が止まなかったのだろうと言う。「パンデミックが始まる前から持っていた財産がものを言うのです。私もオンラインでゲームをして楽しんだ。内向性の人はもともと友達が少ないから、隔離状態の衝撃を吸収出来なかったのではないか」と彼女は言う。

誰もが新しい出発

各国がロックダウンを解除する方向に向かい、皆喜んでいる。「人はそれぞれ出会いを楽しんでいるわけで、パンデミックが終われば、内向も外向も関係なく元の人間関係に戻るでしょう。ズームで会話するなんてもう飽きたのではないか」とグブラとシュリーゲルは言う。

「外向性の人ももちろんロックダウンが解除されて喜んでいます。会社は出来る仕事はリモートワークに振り分けているから、これを内向性の人は緩衝材として使えば良い」とショックルコンは言う。

今回のパンデミックは誰にも心理的圧迫を与えたが、思わぬ所で人の性格と社交性制限の影響が分かり、社会として学ぶ所が多かった。




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