ケタミンの作用機序

2021年8月11日
カロリンスカ大学


WHOによると、鬱は最も頻繁に現れる心の病気で、世界では約3億6千万の人が罹患しているとしている。

発症の原因として遺伝子と環境が考えられるが、現在ではSSRIと呼ばれる抗鬱剤が処方されていて、この薬には効果が出るのに時間がかかることと、3人に一人は全然効かないという問題がある。

薬効の現れが早く誰にも効果のある薬剤が求められているが、そこで最近注目されているケタミンと言う薬剤がある。この薬剤は即効で難治性の鬱病にも効果があると言われているが、幻覚、妄想、依存性等の望ましくない副作用がある。ケタミンはセロトニンに働きかけるSSRIと違って、神経伝達物質のグルタミン酸に働きかける。
副作用のないケタミン類似薬剤が求められていたが、今までケタミンの作用機序は不明であった。

今回カロリンスカ大学の研究から、ケタミンはシナプス前の機序に作用して、グルタミン酸の分泌を減らす事が分かった。

「グルタミン酸の増加とストレス、鬱、感情の不安定には関連がある。もしケタミンがグルタミン酸のレベルを下げるなら、当然抗鬱効果がある」とカロリンスカ大学のスベニングソン氏は言う。

脳細胞がシグナルを発すると、シグナルはシナプスを通過するが、研究で分かったのは、ケタミンが直接AMPA型グルタミン酸受容体を活発化していた。AMPA型グルタミン酸受容体はシナプスの後に存在し、その受容体がシグナルを受け取ると神経伝達物質であるアデノシンを放出し、これがシナプス前のグルタミン酸分泌を抑制していた。故に、シナプス前にあるアデノシンA1受容体を抑制するとケタミンの効果も消えた。

「ケタミンの抗鬱効果はフィードバックメカニズムで成り立っていて面白い」とスベニングソン氏は言う。

カロリンスカ大学のチームはロックフェラー大学とも共同研究をしていて、p11分子と呼ばれる細胞が、脳の空洞に存在する細胞や上衣細胞及び脳脊髄液の流れに影響して、鬱発症の重要な役割をしていると発表している。



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