血液脳関門と統合失調症の関係

2021年4月20日
University of Pennsylvania

脳にある血液脳関門は、血液から脳に入ろうとする病原菌や炎症を阻止して脳を守っている。しかし、その関門が統合失調症では正常に働いていないらしい。
ペンシルベニア大学医学大学院とフィラデルフィア子供病院の研究チームが発表した論文によると、統合失調症では、緩い血液脳関門が免疫システムの浸潤を許している可能性があると指摘している。

「もし血液脳関門に漏れが生じていれば、炎症は脳に入り込む」と ペンシルベニア大学医学大学院のジョージ・アルバレズは言う。

研究では、22q11.2欠陥症候群と言う稀な病気に焦点を絞っている。この病気では、第22番染色体DNAの一部が消失していて、約4分の1の人たちは統合失調症を発症する。

「第22番染色体のDNA消失部分は、血液脳関門を維持する重要な役割をしている」とアルバレズは言う。アルバレズと子供病院のスチュアート・アンダーソンは、血液脳関門と免疫システム、そして統合失調症の関係を調べた。

統合失調症も発症している22q11.2欠陥症候群の患者から幹細胞を取り出し、血管内皮細胞に成長させた。血管内皮細胞とは血液脳関門の壁を作る細胞である。ペンシルベニア大学医学大学院のアレクシス・クロケットによると、22q11.2欠陥症候群患者から作られた血管内皮細胞は健康な人のそれに比べて関門機能にゆるみがあった。同様の実験をハツカネズミでも試したが、結果は同じであった。

脳は免疫特権を持っていると言われている。免疫物質は血液脳関門で物理的に阻止されるばかりでなく、 血管内皮細胞は免疫シグナル分子の表現を弱めている。研究では22q11.2欠陥症候群患者の死んだ人の脳細胞を取り出し調べた所、やはり血液脳関門が物理的に損傷しているのを確認した。これは、統合失調症が、脳神経の炎症により引き起こされている可能性を示している。

「22q11.2欠陥症候群では4人に一人が統合失調症を発症している。そればかりか、実に患者の80%が何等かの心の障害を持っている。血液脳関門と免疫の問題は、統合失調症、鬱、自閉症まで及ぶのではないか」とアルバレズは言う。

アルバレズは、血液脳関門の役割を更に追及して、どのような原因で関門の浸透性が増すのか、その場合、星状細胞の役割は如何なのかを調べるつもりだ。統合失調症と炎症の関係が分かれば、治療法の開発に結び付くとアルバレズは言う。



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