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楽観主義もほどほどに


By ALINA TUGEND
ニューヨークタイムズ・健康欄から
2011年9月23日号
私及び私の家族は悲観思考をする傾向があり、もっと楽観的に考える人間になりたいと思っているけれどなれない。物事を意図的に明るく考えるのは子供じみているし、余りにも事実を無視し過ぎていると感じる。でも社会では明るい顔をしている人の方が受け入れられて仕事の成績も良いとしている。
ただ社会を見ると現在過度の楽観は難い時代になっていて、トンプソンロイターズの調査によると、過去30年間で最低の僅か17%の人しか今後収入が改善すると思っていない。

この厳しい時代において果たして思い切って楽観するのはよいことなのだろうか。エコノミスト、脳神経専門家、心理学者等による研究によると、楽観主義も度を過ぎると良くないのが分かってきた。

最初にまず楽観するとは何かを考え見よう。
楽観するとは「自分は何事も上手く行く」と経文を唱えるように言い続けるのではなく、むしろ物事の根拠を楽観的に考えることであるとペンシルバニア大学の楽観思考心理学センターのマーチン・セリグマン氏は言う。

悲観主義者は悪いことが起きるとそれが未来永劫続くと考えるのに対して、楽観主義者は一時的と考える。一見違いは簡単そうに見えるがその違いには天地の差がある。「あの人は私を嫌っているし、もう関係を取り戻すのは無理だと考えるか、あるいはあの人は今日は私を嫌っているようだが、間もなく元に戻るであろう」と見るかの差は大きいとセリグマンは言う。

でも良いことが起きると楽観主義者と悲観主義者では攻守が逆転する。今回の成功には理由がありこれからも続くと考える人は次も努力をして良い結果と出すのに対して、この成功はたまたまのまぐれであり、次は期待できないと考える人は、次の成功を前にして諦めてしまうかも知れないとセリグマンは続ける。
物事を悲観的に見るか楽観的に見るかは、我々の持って生まれた性向と育った環境の結果であろう。この性向をどれほど変えられるかははっきりしないが、セリグマンは学習で変更可能と考える。

でも過度の楽観主義は危険だ。デューク大学の財政学のマンジュ・プリ氏と経営学のデービッド・ロビンソン氏はほどほどの楽観は良いが過度の楽観は良くないと結論している。
2007年の”The Journal of Financial Economics”誌に掲載された楽観主義と経済選択と題する報告で両氏は、3年毎に行われるアメリカ連邦準備制度理事会の消費者の家計調査の資料を調べて、”貴方はどのくらい生きると思うか”の設問で楽観度を調べた。

実際の統計値より20年も長く生きられると予測した人が5%いて、この人達を最上級の楽観主義者とした。統計値より長く生きられると答えた人達は景気の今後の成り行きにも楽観的に答える傾向があった。
「過度の楽観主義者は貯金をしないし借金の支払いを先延ばして、長期計画をしない。恐らく景気が悪くなるなんて考えたこともないからであろう。そして離婚をしても直ぐ再婚をする」とプリ教授は言う。
ほどほどの楽観主義者は長時間働き貯金をし、クレジットカードの支払いも良い。そして5年くらい先には収入が上がるであろうと信じる。この分類に入る人は今回の景気悪化で期待値を幾分修正しているであろうとロビンソン氏は言う。

過度の楽観主義と過度の悲観主義は理由は違っても同じプロセスを踏んでいるとロビンソン氏は言う。過度の楽観主義者は将来を楽観し過ぎて貯蓄せず、悲観主義者は悪くなると予想し過ぎて貯金に走る。
良い弁護士は悲観的予測をしながら仕事をするとロビンソン氏は言う。彼等は物事が上手く行かない場合を想定しながら仕事を進めたほうが良いのを知っているからであろう。

しかし楽観主義は大学でビジネス専攻の人には役立つようだ。ロビンソン氏はデューク大学のビジネス専攻の卒業生を調査して、彼等の中で楽観的な人は必ずしも成績が良くなくても仕事を見つけるのが早いし、2年後の昇進も良かった。「アメリカのビジネスの世界では人と上手くやっていけるのが重要」と彼は言う。

楽観的な人と悲観的な人の違いは、何か重要な結果、例えば学校の試験の結果、医学検査の結果、仕事の面接の結果等を待っているときに劇的に現われる。カリフォルニア大学の心理学助教授であるケート・スィーニーは77人の学生の最初の中間試験の結果を待つ様子を調査した。するとAを期待していてBしか取れなかった学生はCを期待してその通りだった学生以上に落胆していた。
結果が分かる前に余り楽観しているのもどうか。「もし待っている期間6ヶ月とか1年のように長い場合は楽観も悪くはないが、発表が間近になった時は不安も高まるし、期待値も下がってもいたし方ない」と彼女は言う。

ニューヨーク大学の心理学、神経科学の教授であるエリザベス・フェルプス氏によれば人には楽観バイアスと言うものがある。「生徒に向かって皆さんの中で結婚できると思っている人はどの位いますかと聞くと、殆どの人が手を上げます。しかしでは離婚はあり得るかと聞くとあまり手が上がらない。これは実際の数値である結婚夫婦の半分が離婚する事実と違ってくるわけです。鬱状態は未来を悲観的に見るが事実に近い利点もある」と彼女は言う。

余り能天気に楽観するのも良くないが、悲観してふさぎ込むのは更に良くない。だから今日は気分が優れないなと思ったら友達と意図的に一杯やるのもよし。

専門家は今、科学的に楽観度を上げられるかどうか研究している。



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