2023年7月21日 |
人生を良くする方法として幸せになる、お金持ちになると皆考える。ではその方法はとインターネットで検索をすると、感謝の気持ちを忘れない、人との語らいを増やす、瞑想をする、運動を欠かさないなどが出てくる。果たして本当にそれで人は幸せになれるのだろうか。 今年の7月20日にNature Human Behavior誌に発表された、ブリティッシュコロンビア大学のエリザベス・ダンとデューニガン・フォークによる研究では、世間で言われている幸せになる知恵のほとんどは科学的根拠がないと言う。 2010年、ある有名な心理学誌で超感覚的知覚に関する研究を発表しようとしたところ、データそのものが信用できないとの意見が出て、データの集め方、その分析方法に疑義が生じない方法の作成が求められた。 「この問題はなにも心理学だけではなくデーターの弄りは科学全般に見られ、放置しておくと大変な結果になる」とダンは言う。 データーの弄りとは実験結果の一部だけを報告したり、参加者を都合よく選んだりすることだ。研究者にも理由があるのだろうが、それでは研究が信用できなくなってしまう。言わば矢を放って後から矢が刺さった場所に的を描くみたいなものとダンは言う。 2011年に心理学ではデータの検証には厳格な基準を設ける事で合意に達した。例えば Open Science Frameworkのようなオンラインのデーターバンクに研究データ、分析方法を事前に登録しておくやり方でこれによりデータを一度登録するともう調整できなくなる。 「われわれの腕を事前に縛っておくのです」とダンは言う。そうすれば査読する人たちが研究が発表される前に読めるし、データーが弄られていないことを確認できる。 ダンとフォークが幸せになる有名な5つの知恵を調べたところ、研究で事前登録されていたのはわずか57であった。 幸せになる5つの知恵 ① 感謝の気持ちを述べる。 ② 人との関わりを増やす ③ 瞑想をする ④ 自然の中で過ごす ⑤ 運動をする これ等に関する研究論文22,000件で、わずか494件が比較群を設けて比較していた。①と②では納得できるデータをしめしていたが、それ以外はデータそのものがなかった。 「2011年以前は関連の報告が沢山あったから科学的根拠がありそうに思えたが、研究方法に問題があったのです」とフォークは言う。 ① ②については、効果があっても長続きしなかった。 フォーク等の研究が生活の知恵を全面的に否定するものではないが、効果とその持続性には大いに疑問がついた。 「生活の知恵はある程度心の支えになるが、その効果には大いに疑問がある」とフォークは言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |