不安が長引くかが問題

2021年3月22日
マイアミ大学

マイアミ大学からの報告によると、ちょっとした出来事、例えばコーヒーの茶碗をひっくり返した位の出来事を気にする人と、直ぐ忘れて次に移れる人では、心の健康維持に違いがあるのが分かった。

「不愉快な出来事が忘れない人は心の健康維持が難しい。不愉快な事が次の出来事にまで影響すると日常生活が困難になり、ひいては心の病の原因になる」とマイアミ大学のニッキ・プセッチは言う。この研究は月曜の”Journal of Neuroscience”誌に発表された。

「今までの脳科学では、不安、恐怖の強さに重点を置いていた。しかし、前の出来事がどれほど後に影響するかが重要である。一つの出来事が次の出来事に影響すると一日が暗くなってしまう。この辺のメカニズムが分かれば、心の病気の治療にも役立つ」と同じくマイアミ大学のアロン・ヘラーは言う。

研究では、 ”アメリカの中年の健康”と題する長期の調査から得られたデーターを元に分析し、大脳の奥にある一対の扁桃体の動作に注目した。この調査は1995年に国立老化研究所の発案で開始され、2002年までウィスコンシン・マジソン大学で継続されていた。プセッチとヘラーは調査に協力した52人の記録に焦点を絞った。

調査では、被験者に質問表を渡して一週間 毎日 、ストレスを感じた出来事、幸せ、不安を感じたことを書き込んでもらった。更にfMRIで、60枚の楽しい画像、60枚の不安を呼び起こす画像、60枚の普通の人物の顔写真を見た後の脳の反応を測定した。

そこから得られた結論は、一対の扁桃体の内の左の扁桃体が反応し、不安反応が僅か数秒の場合、その人の生活は比較的幸せであったのに対して、扁桃体の不安反応が長びいた人では時間と共にその影響が現れるのが分かった。

「扁桃体が長く反応すると、前の出来事が次の場面にまで影響するのだろう。扁桃体の反応の強度が、心の健康状態に関係している」と研究の著者は言う。

これがコーヒーカップをひっくり返して落ち込んでしまう人と、そうならない人の違いであるとプセッチは言う。彼女は更に鬱や不安症を発症しやすい人たちについても同じような調査をしたいと考えている。

「鬱、不安症を発症する人では、左の扁桃体の活動が異常に活発で長いのではないか」とプセッチは続ける。



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