食欲抑制剤フェンフェンの2面性と新薬の可能性

2002年7月25日

 正式名称d−フェンフルアミンは食欲抑制剤として10年前に登場し、フェンフェンと呼ばれるフェンテルアミンとの併用の形で数百万人のアメリカ人が処方されたが、多くの人に心臓病を引き起こす事が判明して1997年にアメリカ食品薬品局により認可を取り下げられ、以後多くの訴訟が相次ぐ事になった。しかし未だこの方面の希望が断たれた分けで無く、理想のダイエット薬はこの経験から学んで開発されそうだ。

今回、d−フェンフルアミンの食欲抑制効果を研究する過程で、副作用を起こさない夢の新薬ができる可能性がありと報じられた。新しい発見は食欲を全般的に抑制できるので拒食症の治療にも道を開く事になる。

食欲をコントロールする脳の研究は多くの人員を要し、ボストン、サンフランシスコ、ポートランドの研究者を動員したものであったと明日発売のサイエンス誌は言っている。研究はフェンフェンがセロトニン(神経伝達物質)授受に関係がある脳神経細胞に作用する事実に着目して進められた。

セロトニンは体内で多くの役割を担っておりそれゆえにセロトニンに作用する物質は悪い副作用をお起す。研究の結果セロトニン自身は直接食欲をコントロールせず、メラノコーチンと呼ばれる神経伝達物質を授受するニューロンを通して食欲を抑制するのが分かった。

「だからメラノコーチンに作用する物質を発見すれば副作用の無い食欲抑制を達成できる」とハーバード医科大学内分泌学、薬学の助教授であるジョール・エルムキスト氏は言う。この研究は彼の配下の博士号取得学生であるロラ・ハイスラー氏が指導した。

「メラノコーチンは食欲抑制分野で今、最も注目されている物質です」とエルムキスト氏は言う。

この研究チームのメンバーであるオレゴン健康科学大学の上級研究員であるロジャー・コーン氏もメラノコーチンの研究に重要な役割をしている。研究ではネズミの遺伝子に細工をしてメラノコーチンを授受するある種のニューロンを持つネズミを作り上げた。このニューロンは活性化すると光を発射するので、その状況を電気的に記憶して調べた」とコーン氏は言う。

このニューロンが存在する場所は視床下部の弓状核と呼ばれる部分でいわゆる満腹感に関係がある場所である。「ネズミの内、欠陥があってこのニューロンから送られるシグナルを受ける事が出来ないものは食欲抑制剤であるフェンフェンにも反応をしない」とコーン氏は言う。

「もしメラノコーチンニューロンが活性化していれば食欲は抑制されて体重が減少しますが、活動がストップしていると肥満になります」とエルムキスト氏は言う。

「この食欲抑制神経回路に直接働く薬の開発が注目されていて、多くの製薬会社が新世代の薬に向けて凌ぎを削っています」とコーン氏も続ける。

コーン氏はあるバイオテク会社の経営顧問をしている。この会社では肥満だけでなく極端な体重減少を起こす拒食症を治す薬の研究もしている。「メラノコーチン受容体を遮断すれば体重減少を止められるかも知れない」とコーン氏は言う。

「メラノコーチンを研究すると更に重要な発見だ出来るでしょう。何故ならセロトニンは鬱病、神経症、薬物依存症等心の病に関連していて、メラノコーチンを通して影響を行使しているように見えるからです」とエルムキスト氏は言う。



脳科学ニュース・インデックスへ