家族に統合失調症がいない場合、その患者の遺伝子には自然発生の遺伝子変異が健康な人に比べて8倍も高く存在しているのが分かった。この自然発生した遺伝子変異体は主に脳の発達に影響する神経経路に存在していた。それに比べて家族にあらかじめ発症者がいる統合失調症の患者では、自然発生の遺伝子変異体は存在しなかった。 「我々の研究からは、希に起きる親から引き継いだのでは無い自然発生の遺伝子変異が統合失調症を起こしている可能性が高いのが分かった。これで何故今まで遺伝子探しが上手く行かなかったのか、また患者の多くが子供を生まないにも関わらず広く人類に分布しているのか説明出来るようになった」と研究の指揮をしたコロンビア大学のマリア・カラヨーゴ教授は言う。 「最近は遺伝子の欠如や重複が統合失調症や自閉症の発症原因になっているのではないかと考えられるようになっています。今回の劇的な発表から、統合失調症には親からの遺伝ではないタイプがあるのが分かった。今後研究が加速し、将来の治療法開発に結びつくでしょう」とトーマス・インセルは言う。 統合失調症、自閉症共に遺伝子が大きな役割を果たすが、発症はより広く一般に散在している傾向がある。 今までの研究でも、統合失調症を引き起こす疑いのある遺伝子変異は脳の発達に関連する遺伝子や神経経路に発見されていたが、その遺伝子変異が自然発生なのか両親から受け継いだものかが分からなかった。 遺伝子の故障箇所を特定するために、研究では南アフリカのヨーロッパ系白人であるアフリカーナの人達1077人のサンプルを集め、その中の369人をその親の遺伝子と比べた。親の遺伝子を調べればどの遺伝子が親から受け継ぎどの遺伝子がそうでないかが分かる。 その結果、家族性でない場合、152人中15人に自然発生の変異体が発見されたのに対して、発症していない人では159人中に僅か2人に自然発生の変異体が発見され、8倍の差異が認められた。自然発症するケースでは親から受け継ぐ変異体は健康体に比べて僅か1.5倍であった。 研究では以前から統合失調症に関係ありと指摘されていた22番染色体上の3つの遺伝子欠如が統合失調症に関連するとしている。 脳科学ニュース・インデックスへ |