強迫行為の遺伝子発見
2003年10月23日
神経症の中の強迫行為といわれる神経症を起こす遺伝子変異体が米国と日本の研究者により発見された。変異体には更にもう1つの変異体があり、両方を持つと症状を更に悪くする事が分かった。
強迫行為を含む神経症は患者の生活をかなり困難にさせるが、この発見により、診断と治療が大きく前進する可能性がある。
愛知県豊明にある藤田保健衛生大学のオザキ・ノリオ氏とアメリカのピッツバーグ大学およびイェール大学の研究者グループが今回精神医学誌に発表した。
問題の遺伝子はヒトセロトニン搬送遺伝子(hSERT)と呼ばれるもので、体の中でセロトニンを制御する遺伝子である。セロトニンは神経伝達物質と言われて、感情を左右する化学物質である。
抗不安薬、抗鬱剤の多くはセロトニンに作用するが、この遺伝子変異体を持つ患者では薬の効果が上がらないと研究では述べている。
「一つの遺伝子の中にある2つの遺伝子変異体が、遺伝子の表現を変化させ、それが強迫行為と言う症状を起こすとは考えられていなかった」と研究に加わったアメリカ精神衛生研究所(NIMH)のデニス・マーフィー氏は言う。
研究では170人のDNAが分析された。170人の中には強迫行為の人が30人、拒食症のような摂食障害の人が30人、季節に影響される症状、例えば暗い冬に鬱状態になる人が30人含まれている。その他に健康な人80人のDNAも分析された。
ヒトセロトニン搬送遺伝子(hSERT)の変異体は2人の強迫行為患者から発見され、その家族からも発見された。しかし他の被験者のDNAからは発見されなかった。
この稀な遺伝子変異体は、他の強迫行為患者や感情障害の患者の家族からも発見されるのではと推測される。
研究では更に患者の家族を調べて、その中に遺伝子変異のある人7人を発見した。その内の6人が強迫行為、拒食症、アスパーガー症(自閉症の一種)、対人恐怖、アルコール中毒等に悩んでいるのが分った。
2人の患者のヒトセロトニン搬送遺伝子(hSERT)からは2番目の変異体も発見された。これは薬で言えば2倍量を飲むのと同じで、この変異体を持つ人の強迫行為を治すのは大変難しいことになると研究者は言う。
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