強迫行為遺伝子の発見
 
2006年6月7日

ジョーンズホプキンス大学を中心とする政府援助の研究チームは、人間ゲノムの中の6つの領域が強迫行為に関連していると、6月6日付けの分子精神医学誌に発表した。

「強迫行為は従来心理の領域と信じられてきましたが、次第に遺伝子が重要な役割をしているとの確証が出て来ています」とジョーン・ホプキンス大学ブルーンバーグ校の疫学助教授であり統計遺伝子学者であるイン・ヤオ・シュガート氏は言う。

強迫行為とは意味の無い考えや衝動に悩まされ、繰り返し儀式的行為をする神経症症状で、アメリカ人口の3%が強迫行為患者と推測される。

この研究は強迫行為患者に共通する遺伝子、即ちマーカーを求める最初の人間ゲノム全体調査であり、強迫行為に関連のある6つの領域を発見した。この領域は5つの違った染色体上に存在していた。強迫行為に直接関係のある遺伝子は殆どこの領域に存在していると言える。

「我々は強迫行為は単独の遺伝子からでなく、多数の遺伝子の関連で発症するのではと考えていました」とジョーンズ・ホプキンス医科大学の疫学と精神医学の助教授であるジャック・サミュエル氏は言う。

研究では219の家族から1,008人の血液サンプルを取り寄せ実施した。調査対象の家族は、少なくても一家族に2人の強迫行為の患者が出ているのを条件としている。

抽出された血液サンプルはジョーンズ・ホプキンス大学遺伝病研究センターで分子生物学と統計分析で調査された。遺伝子マーカーと呼ばれる強迫行為特有な遺伝子の連なりは1,7,6,15番の染色体に多く発見された。また二つのマーカーは染色体の3番の位置に発見された。

今後研究はこの6つの遺伝子領域を中心に行われるが、別のマーカーを使って強迫行為遺伝子を特定しようともしている。

どのような遺伝子が発見されても、それだけでは強迫行為を引き起こさないと研究者は言う。強迫行為が発生するには他の遺伝子との結びつきや環境因子が考えられる。

「強迫行為は遺伝子調査では比較的新しい分野です。ですから、更に家族の調査をして、細かいマーカーを使って遺伝子と環境の関連を調べる必要があります。同時に強迫行為に近い症状を起こす遺伝子にも大変興味を持っています」とシュガート氏は言う。

各種の強迫行為を引き起こす遺伝子を調査するには、現状のコンピュータープログラムでは不満足なので、新しい統計的計算方法の開発にも着手している。「間もなく強迫行為の患者に朗報もたらせると信じています」と彼女は言う。



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