パーキンソン病の最初の予兆が、匂い感覚の消失であることがある。 匂い感覚の消失はパーキンソン病の主症状が現れるかなり前から出る。嗅覚の喪失は単に神経の障害と言うより、パーキンソン病そのものの現れと見る専門家もいる。
中央神経系の中でも、鼻の上皮にある感覚神経は、吸引した空気に含まれる毒物に冒されやすい。実際、嗅覚系は、バクテリア、ウイルス、カビ、塵、花粉、有毒化学物質等に曝されていて、炎症を起こす。この炎症は脳の中のマイクログリアの活動を刺激する可能性がある。
嗅覚不全とパーキンソン病の発症の関係はまだ定かではないが、パーキンソン病の発病には、最初に鼻の神経細胞に炎症が起き、これが脳に伝播し、レビー小体を生産する可能性がある。
フロリダアトランティック大学のニン・クァンはこう考える専門家の一人で、今関連の嗅覚神経細胞分子を研究している。雑誌「脳病理」に発表された研究によると、ある種のバクテリアの細胞壁物質が嗅球に炎症を起こすのではと言う。
嗅球に、パーキンソン病に特有なアルファー・シヌクレインタンパクの蓄積も観察された。アルファー・シヌクレインタンパクの蓄積とドーパミン神経の死は、パーキンソン病の特徴である。
ニン・クァン等は、鼻の上皮に起きた炎症は、嗅覚系とドーパミン神経細胞にあるアルファー・シヌクレインタンパクの表現を過剰にして、それがマウスにパーキンソン病同様の症状を起こしたと考える。
ニン・クァン等が使った動物モデルでは、interleukin1betaと呼ばれる受容体タンパクが活性化しているのが分かった。
「我々が発見したのは、バクテリアの毒性刺激は血液脳関門を通過する必要がないことだ。嗅覚粘膜上の炎症が、脳の分子に直接炎症を起こした」とクァンは言う。
パーキンソン病協会によると、アメリカでは毎年6万人がパーキンソン病と診断されている。世界では1千万以上の人がパーキンソン病で苦しんでいる。発症は年齢に大いに関係するが、4%の人は50歳以前に発病している。
パーキンソン病は震え、歩行障害、バランス障害、認知力の減退の形で現れる。
「パーキンソン病は大変治療が難しい神経劣化病です。現在ある薬には副作用がある。新しい発見が病気の治療に結び付く事を期待したい」とフロリダアトランティック大学のランディー・ブレーカリーは言う。
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