強迫行為と想像過剰

2015年8月13日

この研究では、強迫行為の特徴には、想像過剰による現実認識の混乱と、現実からの乖離の2つがあるとしている。

「強迫行為の一般的診断基準に専門家は賛成するが、強迫行為を起こすメカニズムについては未だ分かっていない」と、モントリオール大学の”強迫行為とチック研究所”のフレデリック・アーデマ所長は言う。

2011年の時点で、既に想像の度合いが激しい人、現実から乖離する傾向の強い人が強迫行為を起こしやすいのが分かっていた。今回の研究はこの事実を一般の強迫行為の患者で再確認することであった。

「強迫行為の理論では、強迫行為は、必ずしも浮かび上がった考えで生じるのではなくて、その考えがどのように判断されるかによって起きると説明している。普通の人はおかしな考えが浮かんでも、現実性がないと判断して打ち消すが、強迫行為の患者では、打ち消すなら、打ち消す理由を聞きたいとなってしまう」とアーデマ所長は言う。

方法
実験では75人の強迫行為の患者に質問表を配り答えてもらい、推量の過程でどれほど混乱が見られるか、分裂的人格かどうか、現実からの乖離があるか、強迫観念の強さはどうか、鬱状態、不安等を測定した。

「推量の混乱とは、物事を推量する時に、強迫的疑いが生じる事を言う。強迫行為の患者では、プールに塩素を注入する様子を見て、プールの水には細菌がうようよいるのではないか考える。分裂的性格では、認識力の低下や頑固な思い込みがあり、奇想天外な結論を導く傾向がある。例えば新聞記事を読みながら、それが自分を指しているのではないかと考えてしまう。乖離型とは現実からの乖離であり、一定場面での記憶の喪失を伴い、確認を繰り返す患者に特に見られる。この場合、状況により全く違う行動を取るので2人の人格があるように感じる」と論文を書いたリーダーであるモントリオール大学心理学のステラ・マリー・パラディシスは言う。

結果
研究の結果、強迫行為の患者では、特に推量の混乱と現実乖離が目立ち、故にこれらの症状から強迫行為を診断できるとしている。
「強迫行為の患者では、推量の混乱が酷く、それに伴う現実からの乖離が見られる。彼等には我々の一般常識は最早通じず、想像の世界に没入している。だから、手は一見してきれいなのに、細菌で汚染されていると思いこみ、何度も何度も手洗いが止まらない」と教授のアーデマは言う。

不安、鬱状態、分裂的性格、強迫的思い込み等は、強迫行為の引き金にはなっていなかったが、強迫行為が激しくなると見られるようになる。



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