2017年4月14日 |
先月、アメリカ国土安全保障省とイギリス運輸省は、北アフリカと中東の一部からの旅客について、スマホより大きいコンピューター機器の持ち込みを禁止する措置を発表した。これに対してロイヤルヨルダン航空は、12時間の長時間フライトの退屈を凌ぐ方法として、12の提案をしている。その11項目には人生の意味を考えようとある。スマホもパソコンも見ないで、長いフライトを人生の意味を考えて過ごそうの提案には考えさせられる。 人類は今まで数千年もの間、何もすることがない時は空想の世界を楽しんできた。しかし今はスマホあり、ソシアルメディアあり、Eメールありで空想する時間が無くなってしまった。この変化は大きく、我々の心に対する影響、社会全体の創造性に対する影響は計り知れない。 ひらめきの瞬間 2012年の報告によると、一見無駄な空想している時に問題解決が閃くと言う。実際、空想が創造に結び付く逸話には事欠かない。アインシュタインからノーベル賞化学者まで、偉大なるイノベーターは空想の重要さを認識している。我々自身も入浴中や散歩しているときに、ハッと良い考えが浮かび上がった経験があるであろう。 「我々が心の流浪をする時、脳は無作為に過去の記憶のファイルにアクセスし、感情を再現する。想像で全体の情景を描き、それで模擬テストもしている」と雑誌”Psychology Today”の編集者であるアミー・フライズはいう。この脳の動作により、バラバラな情報が互いにつながり始め、問題解決へ結び付く。 「私の最高の創造的瞬間は休んでいる時です。一日中働いているとアイデアーが枯渇するのを自分でも感じる。そんな時はぐっすりと寝て朝起きると、あれほど難しかった問題がわずか15分で解決する。でも私も現在スマホに夢中になっているのです」と建築工学のグラフィックデザイナーをしているミーガン・キングは言う。 スマホに浸かっているのは彼女ばかりではない。ニールセンの調査によると、アメリカ人は一週間に10時間半ソシアルメディアを見ているという。イギリスのイーマーケッターの調査によるとイギリス人は10時間見ている。これだけ見ていると、自由に空想を楽しむ時間がなくなる。ある時間を過ごす実験では、参加者が6分から15間、全然注意を引くものを見せない場合より、僅かな電気ショックを与える方を選んだという衝撃的報告がある。 別世界 スマホを見ている時と空想している時では、脳の動作が大きく違う。我々の脳には2つの注意システムが存在すると、バージニア大学心理学のダニエル・ウィリングハム氏は言う。2つの注意システムとは、外への注意システムと内への注意システムである。空想をしている時は、デフォルトネットワークと呼ばれる内向きの注意システムが働き、通常刺激がない場合はこのシステムが動いている。 「デフォルトネットワークは自分のことや、過去や未来を考えている時に活発になる。2つのシステムは同時に働かないが、両者は何処かでつながっている」とウィリングハムは言う。同時に使うことが出来ない2つのシステムの内、一方を毎日長時間使った場合、どのような影響が現れるであろうか。「現代は、一方のシステムだけを長時間使う事態になっている。5年とか10年後にどのような結果が現れるか、特に10代の子供が心配だ」とウィリングハムは言う。 スマホの毒消し 最近はスマホの使い過ぎにブレーキをかける人が出て来た。キングもその一人でフェースブックから離れようとしているが、まだ難しいと本人も認めている。ウィリングハムもスマホを愛用しているが、散歩に出かけるときは家に置いていくと言う。フライズもスマホの利用時間を限定することにした。 「今後1年間、スマホの利用を制限しようと思う。さっぱりいい考えが湧かない時は散歩とか頭を空っぽにする時間を持つようにする。社会で活躍しているリーダーの多くが空想中に成功に結び付くヒントを見つけている」とフライズは言う。余裕の時間を持ち、想像を楽しむべきと誰でも思うが、現代では言うが易しく行うが難しい。 キングはフェースブックを見る癖をやめたばかりか、会議に出かける時もスマホ、コンピューターを持って行かない。キングはできるだけ運動を心がけ、良く寝て、日中にも休憩を取る。近所の公園で休憩する時は、紙と鉛筆だけ持って出かける。 「これが想像力を引き出すベストなやり方です。あそこの公園に座っていると、時間が停止する」とキングは言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |