パニック障害を起こす遺伝子の発見 

2001年8月23日
 
 
パニック障害や神経症を起こす遺伝子が発見されたと最近発表があった。この発見が新しい薬の開発につながる可能性があり、人々を不安から解放するかも知れない。

「神経症を起こす新しいメカニズムを発見したように見える。大変重要な発見です」とアイオア大学のパニック障害遺伝子を研究している精神科医であるレイモンド・クロー氏は言う。ある統計によると全人口の10%が神経症性の不安症を経験すると言われている。

バルセロナ大学の医学分子生物学センターのザビエル・エスティビル研究チームはパニック障害、外出恐怖、対人恐怖の患者を持つ家族を対象にした遺伝子調査をした。結果は患者のいる家族の構成メンバーではその90%で染色体15にある狭い部分に遺伝子異状が発見された。その部分では遺伝子が二重複写されていた。

この遺伝子異状がこれら家族特有のものでないのを証明する為に、家族とは関係が無い神経症の患者70人も調査した。驚いた事に97%でこの遺伝子の二重を発見した。これに反して一般の人が二重を持つ確率はわずか7%であった。エスティビル博士はこの遺伝子をDUP25と命名した。

「この二重になった遺伝子部分は60以上の遺伝子を含んでいます」と研究チームのメンバーであるモニカ・グラタコス氏は言う。その内の23個の遺伝子だけが同定されている。しかしこれらの遺伝子は神経細胞間の伝達、相互作用をコントロールするタンパク質を生産する遺伝子だから、1種類か2種類のタンパク質が多すぎるとストレスに対して脳の過剰反応を引き起こすのでしょうと研究者は言う。

DUP25遺伝子が神経症発生に大きく関与しているのは間違い無いが、持っていたから必ずしも神経症になるわけでも無い。「環境も大きく作用します。この二重遺伝子を持っていても発病しない場合が多いのです」とグラタコス氏は言う。神経症のいる家族でDUP25遺伝子を持つ家族の20%の人が神経症を全然発病しない。

研究チームは現在DUP25遺伝子の中のどの遺伝子が実際神経症を発病させるのか研究している。もし発見出きれば、遺伝子を抑えるか、あるいは生産されるタンパク質を抑制するかする薬を開発できるかも知れない。「そこまで到達するのは容易ではありません。更に5年から10年の歳月が必要でしょう」とグラタコス氏は言う。


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