貼りつけパッチ型の抗鬱剤

2002年12月3日
 
貼りつけパッチタイプの抗鬱剤は抗鬱剤の中でもはじめてであろう。MAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)と呼ばれる抗鬱剤は特に新しい薬ではないが、今までその副作用の為に余り処方されなかった。しかし膏薬タイプの登場で鬱病患者には大きな助けになりそうである。

その副作用と言うのは、ある種の食物と一緒に服用すると急激で激しい血圧上昇を起こすことである。しかしこの膏薬型の登場でその問題も解決出来るようだ。

The American Journal of Psychiatry誌の11月号の発表によると、セレジリンと呼ばれるMAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)を膏薬のように貼りつけて、従来心配されていた副作用がほとんど解消された。

6ヶ所で行われたこのテストでは誰が本物のパッチを貼り、誰が偽薬パッチを貼ったか患者も研究者も分からないようにして実行された。本物のパッチを貼った患者の42%が6週間以内に本格的鬱状態から回復した。回復のテンポも従来の抗鬱剤よりかなり速かった。

実験に加わったある被験者は名前を伏せることを条件に次ぎのように述べている。「丁度スイッチが入ったような感覚です。パッチを貼る前は身動きが取れなかったのですが、パッチを貼った数週間後、急激に気分が変化しました。将来の見通しに大きな変化があり、希望を持って未来が見えるようになりました」

モノアミン酸化酵素は脳と消化器に多く存在する。脳内にあるモノアミン酸化酵素を抑制すると、神経伝達物質をより多くシナプス中に存在させる事が出来て、患者の気分を向上させると考えられている。しかしMAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)を内服薬として処方すると消化器の中のモノアミン酸化酵素をも抑制してしまう。この場合、重大な副作用が発生し、例えば古くなった食物中に存在する有害物質であるチラミンを解毒する作用まで阻害してしまう。

だからMAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)を取っている患者はチラミンが入っていない食物を食べないとならない。例えば古くなったチーズ、赤ワイン、醤油、発酵食品等は避けないとならないし、アルコールは止めるか少ししか許されない。MAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)とチラミンを多く含む食物を同時に取ると、危険で急激な血圧の上昇に見舞われる。

皮膚を通してセレジリンを体内に送りこむと、抗鬱剤を取りこむ経路が変わる事になる。内服の場合、薬は消化器と肝臓でフィルターにかけられるが、パッチでは薬が中央神経系に直接運ばれる。

「この研究で我々はMAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)を消化器中のモノアミン酸化酵素を阻害する事無く脳に作用させる事が出来た」とマサチュウセッツ州ベルモントのマックリーン病院の臨床精神薬研究プログラムのアレキサンダー・ボドゥキン氏は言う。

この研究はフロリダ州タンパにあるサマーセット製薬(セレジリンを開発した会社)の援助により行われた。

この実験では被験者は最初、チラミンの入らない食物を与えられたが、その後の実験では普通の食物が与えられた。

アーカンソー医科学大学の食餌栄養学の教授であるビバリー・マッケーブ氏は「このやり方による薬物の体内への送り込みは有力である。セレジリンを経皮膚投与するとチラミン反応を殆ど抑制出きるし、薬物は血液中に安定的に吸収されるので効果を高める」と言う。

マンハッタンにあるニューヨーク州精神医療センターの鬱度評価部門のフレデリック・キトキン氏は「MAOI(モノアミン酸化酵素抑制剤)は実際は大変有効な薬なのですが、副作用があるので服用を難しくしている。パッチに関する研究は大変素晴らしいが、更に効果を実証する必要があるでしょう」と言う。

特記すべきは177人の患者にセレジリンでテストをしたわけであるが、94%が服用を忠実に実行した。経口薬の抗鬱剤ではその率は大幅に下がるとボドゥキン氏は言う。

被験者の内36%の人に見られた副作用はパッチを貼った部位に赤い炎症が見られた事である。このような炎症は他の抗鬱剤に見られる副作用に比べれば症状としては軽いものであるとボドゥキン氏は言う。




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