恐怖、不安と神経回路

2020年10月19日
メリーランド大学

メリーランド大学のアレクサンダー・シャックマンと、ヨンセイ大学(韓国)のジュヨエン・フーからの報告によると、恐怖と不安は脳の同じ場所で発生しているらしい。研究はthe Journal of Neuroscience誌に先週発表されたが、もしこれが本当なら、従来の考えを大幅に訂正しないとならない。

「恐怖と不安の定義はフロイトの時代に遡るが、フロイトによると恐怖と不安は別個のものとされている。脳スキャンを使う最近の科学者も、恐怖と不安はそれぞれ別の神経ネットワークから発生していると説明してきたが、我々の研究では、恐怖も不安も脳の同じ部位から発生しているのが分かった」とメリーランド大学のシャックマンは言う。

従来の考えでは恐怖は扁桃体で発生し、不安は扁桃体の近くにある分界条床核により引き起こされるとされた。しかしシャックマン等の研究によると、扁桃体も分界条床核も両方ともに恐怖、不安に反応していた。

シャックマンは、メリーランド大学神経スキャンセンターにある最新鋭のfMRIを使って従来の考えを検証した。実験では被験者に”メリーランドの恐怖のカウントダウン”と呼ばれる経験をしてもらう。即ち被験者は、二通りのカウントダウンを与えられた直後にショックを経験し、嫌な画像を見せられる。

一つ目のカウントダウンは通常のそれで 3, 2, 1と数える。二つめのカウントダウンでは 16, 21, 8のようなバラバラの数字を読み上げた後に同じ経験をする。

最初のカウントダウンでは恐怖を被験者に起こすはずであるし、二つ目のカウントダウンでは被験者は不安を感じたはずであるが、結果は両方ともに扁桃体と分界条床核が反応し、両者に脳の反応の違いが見いだせなかった。

この実験結果は、アメリカ国立精神衛生研究所が推奨する”研究領域基準”に大きな疑問を投げかける。

「研究領域基準によれば、恐怖は扁桃体に依拠し、不安は分界条床核に依拠する事になっている。この考えは、今から20年前に出来た考えで、既にネズミ、サルを使った研究や人間の脳スキャン画像による研究で、この考えに疑いが生じていた。そろそろ、研究領域基準も時代に合わせるべきだ」とシャックマンは言う。

アメリカ国立精神衛生研究所が推奨する研究領域基準は、研究ばかりでなく、製薬会社、慈善団体、投資会社等に広範な影響を与える。

「病的不安は、個人と社会に重大な影響を与えている。不安の研究は、今まで着実に進歩して来ているが、治療成績はとても満足とは言えない。我々の目的は、感情研究を新しいステージに乗せて研究を加速させることです」と彼は続ける。



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