分裂病と躁鬱病が 同じ遺伝子を共有している可能性 2003年9月5日 |
イギリスからの研究報告によると、分裂病と躁鬱病は同様の脳細胞の障害から起きるのでは無いかと言う。これが事実だとすると、この2つの病気に対する考えが一新される事になる。
世界には現在2400万人の分裂病患者がいるが、多くが思考と行動に傷害があり、幻視、幻聴の精神異常を経験している。今までは、分裂病は脳内化学物質のレベルが正常でない為に起きていると考えられていた。理由は脳細胞内の化学物質に働きかける医薬が分裂病に一定の効果があったからである。 今回の研究は2001年に報告された”希突起グリア遺伝子と分裂病の関係”説を裏付けるものである。「この考えに賛成している人が次第に増えている」と前回の研究に参加したニューヨークのシナイ山大学のケネス・デイビス氏は言う。 更にバーン氏のチームは15人の躁鬱病患者の脳も調べて、同じ希突起グリア遺伝子の活性が衰えている事実も発見している。「この研究結果はかなり有力だ」とメリーランドのベテスタにある国立精神病研究所で神経症関連を研究しているフセイニ・マンジ氏は言う。 作用メカニズムがどうであろうと、ミエリンが形成されなければ、当然思考と記憶に傷害が発生して、分裂病、躁鬱病を起こすであろう。更に今回の発表には掲載されなかったが、150人の死後の脳を分析した研究では、分裂病では細胞内のエネルギーを生産するメカニズムにも異常が起きているのが分かった。希突起グリアは大量のエネルギーを消費する為にエネルギーの補給が間に合わないのかも知れないとバーン氏は言う。 もしこのような考えが正しければ、現存の分裂病治療薬は単なる症状を抑えているだけに過ぎない。新しい薬が出来れば、ミエリンの喪失を防ぎ、エネルギーの供給を増やす、そんな薬になるに違い無い。「それでも未だこの病気のほんの取っ掛かりをつかんだだけだ」とマンジ氏は言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |