ブロッコリーの芽と統合失調症

2019年5月8日

ジョーンホプキンス大学の発表によると、統合失調症の患者に見られる脳内の化学物質のバランスの乱れは、グルタミン酸に関連があると言う。この乱れを元に戻すのに、ブロッコリーの芽から抽出した物質が有効かも知れないと発表している。
ブロッコリーの芽から抽出したスルフォラファンが、将来統合失調症改善に使われる可能性がある。

「スルフォラファンが、統合失調症発症リスクの高い人の発症を遅らせたり、症状を軽くする可能性がある」ジョーンホプキンス大学のサワ・アキラ氏は言う。
統合失調症は幻覚、妄想を起こし、考え、感覚、行動、理解、会話の混乱の形で現れる。現行の薬は十分とは言えず、心臓血管への影響、不随意運動、落ち着きのなさ、硬直、震え等の好ましくない副作用を伴う。

今年の1月9日のJAMA Psychiatry誌に掲載された研究では、健康な人と統合失調症の人の脳の5つの領域を測定して比較している。被験者には、ジョーンホプキンス統合失調症センターから81人の統合失調症の患者と、一般から健康な人91人が選ばれた。参加した人達の平均年齢は22歳で、58%が男性である。得られたデーターをコンピューターで分析した所、脳内の代謝物とその量の特定に成功した。

統合失調症の患者では、前帯状皮質で健康な人に比べてグルタミン酸の量が4%少ないのが分かった。
グルタミン酸は脳細胞間でメッセージを伝達する役割をしている。この物質の量が鬱、統合失調症と関係していると考えられていたが、今回の実験で確かめられた。
統合失調症の患者では、前帯状皮質でグルタチオンが3%低く、視床で8%低くかった。グルタチオンは三つのアミノ酸からなるペプチドで、そのアミノ酸の一つがグルタミン酸である。

研究ではグルタミン酸が脳でどのように処理されるのかを調べた。グルタミン酸はグルタチオンを構成する一要素で、余分なグルタミン酸はグルタチオンとして保持される可能性がある。もしそうなら、薬を使ってグルタミン酸が少ない時はグルタチオンを分解して送り、多すぎる時はグルタチオンを作成して溜め込めばよい。

2月にJAMA Psychiatry誌に掲載された報告では、 L-ブチオニン・スルフォキシミンと言う薬物で、ラットの脳内のグルタミン酸レベルを上げる実験をした。この物質は酵素に作用して、グルタミン酸からグルタチオンになる変化を抑制する働きがある。
ラットの脳の様子を見ると、脳細胞は活性化し、細胞間の会話は活発になった。この変化は統合失調症の患者に見られる変化である。

次に、グルタミン酸をよりグルタチオンの形で固定する場合を調べた。
ブロッコリーの芽に含まれるスルフォラファンと言う物質を使って、グルタミン酸をグルタチオンに固定する。 スルフォラファンは遺伝子のスイッチをオンにして、グルタミン酸をグルタチオンの一部にさせる働きがある。
この措置をラットにすると、ラットの脳の細胞の活動が低下し、細胞間の会話が少なくなった。これは、統合失調症の患者が一時的に症状が軽減するのに似ている。

「我々はグルタチオンをグルタミン酸を蓄えたガソリンタンクになぞらえる。ガソリンタンクが大きく、沢山ガソリンが入っていれば運転に余裕がある。しかしガソリンが減ると間もなく走れなくなる。統合失調症の患者では、このガソリンタンクの容量が小さいと考える」とジョーンホプキンス大学のトーマス・セドラックは言う。

次に研究では、スルフォラファンが健康な人の脳内のグルタチオンレベルをどう変えるか調べた。

2018年4月に発表された研究では、ブロッコリーの芽から抽出されたスルフォラファン100マイクロモル含むカプセルを、毎日2個づつ一週間、一般から抽出した健康な男女9人に飲んでもらった。
ボランティアの脳の3つの領域を、MRSを使ってグルタチオン・レベルの変化を見た。飲み始めて一週間後には、グルタチオン・レベルが平均30%上昇していた。海馬ではそのレベルが、平均1.1ミリモルから0.27ミリモル上昇していた。飲んだ後の感じを聞いたところ、ある物はげっぷが出ると言い、胃がムカムカすると言う人もいたが、大きな副作用はなかった。

今の所、スルフォラファンが統合失調症の患者の幻覚の改善につながるかははっきりしない。量をどれほど飲めば良いか、効果が現れるまでどの位時間がかかるかが分かっていない。以上により、薬局で売っているスルフォラファン・サプリメントに走らないように注意している。

「健康のために、食事に気を付け、定期的に運動を心がけるようにと言うが、心の病気に対しておなじよう事が出来るか。近い将来それが出来たらよいと思う」とセドラックは言う。

スルフォラファンはアブラナ科の野菜に見られる物質で、ジョーンホプキンス大学のポール・タラレー等により化学保護物質と判定されている。



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