自分を愛すること

2021年1月13日


貴方は最近失敗した事あるだろうか。もし失敗したとしても、思いだしては冷や汗をかくのはあまり良くない。自分を責めると物事は反対に回転してしまうからだ。多くの人は、自分を厳しく見つめれば今後その失敗を繰り返さなくて済むと考える。しかし、自分を追い詰めるとストレスのレベルが上がり、士気も下がり結果は良くないのが分かった。
自分を過度にいじめないで困難な時にこそ、自分に同情し失敗を許すべきだというのが最近の知見である。「優しい友人を想像しなさい。彼等は条件抜きで貴方を許すはずだ。自分に優しくとは優しい友人のように貴方を見つめなさいという事です」とテキサス大学のクリスティン・ネフは言う。

イギリスのコメディアンであるルービー・ワックスは「自分自身に優しい人って、ゆっくり風呂に入って歌を歌って幸せする人ではないか」と言っている。一見無駄に見える風呂に入り歌を歌うのが落ち込みからの回復に良いとはうれしい。

回復の役割を果たすのは、愛される自分であって自尊心ではないこと
ネフの研究は彼女の個人的経験に遡る。今から20年も前に彼女自身離婚を経験している。「あの頃は最悪で精神的にも追い詰められた。救いを求めて現地の仏教センターに行き、瞑想グループに参加した。その中でもっとも救われたのは、瞑想の後に行われる講話であった。講師は自分に優しくと説き大いに感銘を受けた」と彼女は言う。

自分を愛するとは一見自尊心の回復に似ているが、前者は自分を許し高く評価するのに対して自尊心は、自分の価値を冷静に比べる傾向がある。一般に自尊心を評価する場合、自分は社会に役立つているかどうかを考える。これでは、人との競争心を呼び込み、競争に敗れればナルシシズム的自己愛に逃避するかも知れない。「自尊心の回復は多分に偶発的であり、自尊心回復に失敗すると人を攻撃し始める」とネフは言う。

自分を問い詰めると結果は逆に出る
自分に優しくすると、他人を攻撃する必要がなくなる。更に自分が傷ついた時、今直ぐその場で実行できることだ。彼女は性格的傾向がどの方向に向いているか判断するために、次の項目を用意した。各々に対して殆ど起きないか、何時も起きるかで自分のタイプを判断する。
  1. 自分が傷ついた時、自分をいたわるようにする。
  2. 自分の失敗は自分個人の原因とせず、誰にでも起きると考える。
  3. 自分が追い詰められた時、自分以外の状況にも考慮する。
あるいは
  1. 失敗をした自分に不満になり、自分を問い詰める。
  2. 惨めな自分を考えて孤独になる。
  3. 自分に対する問い詰めが強迫的になり、止まらなくなってしまう。
最初の三つにうなずき、次の三つに否定的であるなら、自己愛評価点は高い。
ネフは、自分を愛する態度が果たしてどう働いているか、大学院の学生を対象に調べた。すると自己愛が少ない人では、鬱的で不安が高かったのに対して、自己愛が高い人は生活の満足度が高かった。注意すべきは自己を愛する事と自尊心の維持では異なる事である。自信満々そうに見える人でも、その人が己の失敗を許さないとしたら幸せであるとは思えない。

心理学のハイライト
その後、高校生からアメリカ退役軍人まで広く調査をして、同じ結果が得られた。今心理学ではこの方面の研究は人気がある。そこで自己を愛すると、心ばかりでなく体にはどう表れるかが興味ある所だ。最近の研究では、腰痛、頭痛、むかつき、呼吸器の障害等が少ないと出ている。恐らく自分に優しくすると、体にストレス反応が起きないのであろう。ストレスが強いと炎症反応が起きて、これが細胞を傷つける。また己を愛する人は、自分の体に気を付けて良い食事をし運動を欠かさない。

「己を愛すると人は先を予測して行動をする。夜になったらさっさと寝るし、朝は早起きする。自己批判を抑えると、生き生きするのを彼等は知っている」とイギリス・ダービー大学のサラ・デューンは言う。

人は一般に、自分に対して甘いと段々怠慢になり意思の力が弱くなるのではないかと考えるとネフは言う。でも彼女の2012年の研究では、己を愛する人の方が自分を正す意欲を見せていた。彼等は学業結果が悪ければより勉強に励むし、友達の信頼を失いそうになった時は、それを補うように努力をする。己を愛するとは、自分の弱点を厚い保護で覆うようなものだ。それにより、不必要に自分を守る必要もなくなり心理的負担が減る。

速攻法
ではどうしたらより自分を愛せるようになるか。ここに自己愛瞑想法と言うのがある。スイスのベルン大学のトビアス・クリーガーは、インターネット上に自己愛の練習コースを設けた。参加して7回のセッションを経験すると、人は自己愛の得点が上昇し、ストレス、不安、鬱が減ると言う。
あるいは、優しい友人の観点から書いた手紙の形で自分を見つめる練習もする。この瞑想法で改善する所を見ると、自分を問い詰める生き方の変更はそれほど難しくないらしい。
「パンデミックの今日この頃、自分の家で過ごし、家族のケアーをして精神的に沈みやすい。この環境を自己愛ではね返そう」 とネフは言う。



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