今までセロトニンのレベルが低いために引き起こされると信じられていた心の病気が、実はGSK3と呼ばれる酵素により起こされている可能性が大きいのが、今回の研究で明らかになった。セロトニンは現在使われているSSRIと呼ばれる抗鬱剤が最大のターゲットとしている神経伝達物質であり、SSRIでは間接的にセロトニンのレベルを上げて症状を軽くする。GSK3酵素に直接働きかけることにより、即効で効果のある薬物が期待されている。 マウスを使っての実験では、セロトニンのレベルが低いマウスのGSK3酵素の活動を抑制すると、マウスの鬱状態を改善した。 GSK3酵素を抑制した場合の効果を判定するために、研究ではセロトニンのレベルが低いマウスの行動を観察した。セロトニンが低いマウスは、尻尾を抑えて邪魔をすると簡単に行動を諦たり、隠れ場から出て新しい場所にチャレンジする意欲が落ちていた。 このような不安、鬱状態を示す行動がGSK3酵素を抑制すると改善した。研究ではGSK3の抑制は、遺伝子工学と化学物質を作用させて起こした。この実験の成功で、心の病気の発症には、よりGSK3が関与しているのが分かり、新しい薬の可能性が出てきた。 セロトニンは数ある神経伝達物質の一つで、脳細胞はこの神経伝達物質により互いに交信をする。セロトニン系の障害が鬱状態、躁うつ病、神経症、自閉症、統合失調症発症の一部原因と考えられている。 しかし最近はセロトニン系の障害は分子相互の連鎖反応の一つと考えられるようになってきた。その連鎖反応の一つにGSK3酵素が含まれると今度の研究が示してる。 この実験では、Tph2遺伝子と呼ばれるセロトニンを生産するもう一つの酵素を作る遺伝子を基礎に研究をした。この遺伝子の変異体はある種の鬱病に関連しているのが分かっているが、研究では遺伝子工学で同じ変異体を持つマウスをつくり調べて、脳のセロトニンのレベルが80%下がっているのを確認した。 セロトニンのレベルが下がるとGSK3酵素が活発に動き出し、脳の細胞に信号を送り込みマウスは病的行動を開始した。実験ではセロトニンのレベルを上げるのではなくて、GSK3酵素の活動を抑制することにより治療に成功した。 結論するとGSK3酵素とTph2遺伝子が共同して不安症を起こしているのが分かった。 脳科学ニュース・インデックスへ |