ドモリと脳の障害 2002年8月6日 |
先週ドイツの研究者からドモリは脳の構造的障害により起きているとの発表があったが、今の所、診断基準や治療法を変更するものでは無いようである。 しかし会話障害を研究している専門家の中にはこの研究を大いに評価する人達もいて、彼等は問題の本質が見えてきたとしている。子供の中にはドモリがあっても成長と共に消失するグループがあり、消失するかどうか早期に診断するのに役立ちそうである。 American Speech-Language-Hearing Associationの発表によると、アメリカには現在300万人のドモリの人がいて、殆どが子供であり、成長と共に消失する。しかし1%のアメリカ人は大人になっても問題が解決しない。 アメリカ言語障害協会によるとドモリに悩む人の中には有名人がいて、例えば女優のジュリア・ロバーツ、メディアのジョーン・ストッセル、元英国首相であるウィンストン・チャーチル等がそうである。 ランセット誌の発表によると、ハンブルグ大学とゴッティンゲン大学の研究者は脳スキャン装置を使って15人のドモリ患者と普通の人の脳を調査した。その結果ドモリ患者では左半球のある部分の構造に問題があるのが発見された。 この部分にある繊維器官が発声とかスピーチに重要に関わっている脳各部分を連結している。研究ではドモリの人の脳ではこの左半球の言語を作成する場所と実行をする場所同士でのタイミングのずれを発見した。研究者はこの繊維器官の障害がドモリの原因ではないかと推測している。 「ドモリとこのメカニズム障害は今までにも調べられていた、しかし解剖学的に突き止められたのは今回が最初です」とハンブルグ大学のコーネリウス・ワイラー氏は言う。 ワイラー氏と研究チームはこの発表の中で「子供は言語とスピーチを獲得する過程でドモリ障害が起きる事があります。しかし成長と共に消えていきます」と述べている。 2歳から5歳の間に殆どの子供は’上手く話せない’状態を経験するが大抵解決する。しかしそのまま大人になっても続く場合もある。 ドモリ患者では右半球の言語野がドモリの補正をすると言われている。しかしワイラー氏の研究チームは右半球の介入のし過ぎがドモリの原因であるとは考えていない。 ドモリの原因に付いては長い事、論争されていて、原因は人により違うのでは無いかと言う人もいる。 この研究結果により、どの子供のドモリが一時的であるか、あるいはそうでないか、判断出来るようになるかも知れない。 ドモリ専門家はこの研究を評価するが、但し書き付である。 「この研究は良く出来ていると思いますが、注意して読む必要がある。研究では被験者の数が少ない。それと大人だけが対象である。この研究では今までのスピーチセラピーの経験を照合していない。照合していれば研究結果に影響していたでしょう。 右半球の過活動はドモリの為に生じた結果でしょう。ドイツのチームが発見した事実はドモリという難しいパズルを解く1つの鍵に過ぎない。臨床的応用はまだ先の話です。診断や治療に影響は与えませんが、より理解を深めたのはよい事です。 子供がドモる時にどの子供にスピーチセラピーを施すべきかは我々にとって難しい問題です。恐らくこの研究が10年後には役立つでしょう」とフロリダ州立大学の言語障害の助教授であるリサ・スコット・トロウトマン氏は言う。 「ドイツチームの次ぎの課題は、ドモっていたが成長に従って解消した子供についての研究です」とワイラー氏は言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |