反芻思考の止め方

2023年2月1日


会社で起きたこと、別れた妻のこと、胃のあたりの痛みが病気でないかと繰り返し考える鬱陶しい思考を反芻思考と呼ぶと、アトランタで精神科を開業しているトレイシー・マークスは言う。
反芻思考自体は心の病気ではないが、病気の一部である場合もあるので何処までが普通で、何処から治療対象かを考えてみよう。

反芻思考を理解する
「考え過ぎは誰でも経験する健康な脳の活動であるが、暴走してブレーキが故障した列車のようになったら治療が必要です」とピッツバーグ医科大学のグレッグ・シーグルは言う。
「考えたくないが考えが止まらないし苦しいと感じたら、強迫性の反芻思考です」とロスアンゼルスで強迫行為専門の治療をしているマイケル・グリーンバーグは言う。

「反芻思考のもう一つの特徴は、解決策がないものを繰り返し考えること。反芻思考は男性より女性に多い。完全主義者も陥りやすい」とマークスは言う。
「慢性的疼痛、癌、心臓発作など健康に問題を抱えている人も陥りやすい。強迫行為、不安症、鬱、躁鬱病では反芻思考が特徴である」とシーグルは言う。

どうしたら反芻思考を止められるか
反芻思考にも有効な解決策があり、それには意図的に気分転換をすれば良いとシーグルは言う。
2011年、対人不安を抱える学生を対象に反芻思考実験をした。学生には3分間、聴衆の前でスピーチをしてもらい、その後一方のグループは言葉の組み換えゲームをするが、もう一方のグループでは不安を敢えて誘う反芻思考をする。結果は組み換えゲームをしたグループでは、スピーチの結果をくよくよ考える事が少なかった。

2008年に行われた60人の大学生によるテストでは、人生で孤独を感じたこと、悲しかったことを思い出してもらった。その後8分間、一方のグループでは反芻思考して、他のグループでは瞑想、気持ちの切り替えをした。反芻グループではスピーチ結果をくよくよ考えたのに対して、気持ちを切り替えたグループでは感情の回復が早かった。瞑想したグループでは良くも悪くもなかった。

「反芻思考から脱出するには音楽を聴く、友と語る、運動をするのが良い」とマークスは言う。
「反芻思考を避けたかったら、不安を起こす対象から離れるのです。映画を見て家族の死を思い起こすのならその映画を見ない。スマホの連用が気分を不安にさせるなら、しばらくスマホを使わない」とエディンバラ大学のジョディー・ルーイス・ラッセルは言う。

「ソーシアルメディアではミュートボタン、無視ボタン、興味ないボタンを多用して心の平静を保つ。気分が不安定と感じたら、インターネットを避ける。あるいはタイマーを設定して、心配する時間を限定するのも良い。10分くらい心配する時間を自分に与えて、それ以上は考えない」とシーグルは言う。日記をつけるのも役立つとマークスは言う。

現在に注目するのも一つの方法。人が反芻思考に入ると、考えは過去と将来に固着してしまう。過去は戻らないし、将来はどうなるか分からない。これを避けるには今の自分に注目する。前に何があるか、室温は何度か、何か匂ってくるものがあるかと注意を向けるのも良いとマークスは言う。

治療が必要な反芻思考
以上述べたやり方でも改善しない場合、強迫行為や不安症、躁鬱病の症状の一部である場合があり、治療対象になる。反芻思考が止まらない人で、気持ちの切り替えや瞑想を繰り返しやり、逆に悪くなった経験をした人もいると思う。反芻思考を避けようと何かをする動作が反芻思考を呼び込んでしまうのだ。

それでもグリーンバーグは、反芻思考を停止出来ると言う。
「問題を解決しようとする姿勢を解くのです。ただ止めるだけで、視覚化して捉えるとか具体的にどうするを考えない」とグリーンバーグは言う。

反芻思考自体はそれほど悪いものではない。仕事から帰って来て家でくよくよ考える事もある。その結果、友達との仲直りが出来るかも知れないし、思い切って仕事を辞めるきっかけになるかもしれない。問題は反芻思考の質で、尋常ならざる不安が押し寄せてくるなら治療の対象になるとマークスは言う。



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