記憶の仕組み


 アメリカ国立精神衛生研究所 科学ニュースより
2014年6月3日

アメリカ国立精神衛生研究所が援助する研究が、光を使ってネズミの記憶を作成し、消去する実験に成功した。記憶とは、神経細胞間の連結強化である事を証明する最初の研究発表であった。

「我々の実験結果は、脳の記憶とは、神経細胞同志の連結の強化であることを示している。また、シナプスの結合が弱くなると、神経細胞間の集合が解体されて記憶も消えた」とカリフォルニア大学のロバート・マリナウは言う。この研究は2014年6月1日に”Nature”誌に発表された。

「この発見は、認知症の治療に役立つばかりでなく、PTSDのような、制御不能になった過去の記憶を癒すのに役立つかも知れない」とアメリカ国立精神衛生研究所所長であるインセルは言う。

今まで、ニューロン間の連結の強化が、記憶の形成に関連しているのではないかと長いこと言われてきたが、それを証明する手がかりがなかった。

マリナウの実験では、ニューロン間の結合が強化されると記憶が形成され、結合が弱くなると記憶が消滅し、再度強化すると記憶がよみがえった。実験を成功させるには、精密に神経細胞を絞る技術が要求され、それを最新の技術である光遺伝学が可能にした。

丁度、藻が太陽の光に反応するように、脳細胞の一部に光遺伝学を組み込み、レーザー光線を記憶回路に照射して刺激を与えた。
ネズミに音を聞かせると同時にその足に電気ショックを与えると、通常音を聞いた瞬間にネズミはすくんでエサ探しを止める。 研究では、足に電気ショックを与えると同時に、レーザー光線を聴覚恐怖記憶回路に照射した。

以前のように電気で刺激をするやり方では、精密な局部刺激は不可能であった。「ジャングルを探すようなもので、沢山の神経細胞を大雑把に刺激した」とマリナウは言う。

光遺伝学を使って死後の脳を調べると、記憶回路を構成するニューロンの神経伝達物質に対する反応が変化した。これにより、記憶とはシナプスの連結の強化であるとする仮説が実証された。

「アルツハイマー病の記憶の喪失も、シナプスの連結が弱体化しているからであろう。将来、アルツハイマー病の進行を防止する手法が見えてくるかも知れない」とマリナウは言う。

「記憶とはニューロン間の長期的連結強化であると分かったが、そこに至るには、精密な記憶回路の特定と、その回路だけに働きかける光遺伝学の手法が重要な役割をした」とアメリカ国立精神衛生研究所の、神経科学と基本行動科学のアサヌマ・チエコは語る。

「オバマ大統領が提案した”革新技術による脳研究プロジェクト” は革新的技術の開発を促している。今回の研究も、最新の技術が重要な役割をしていた」と国立神経障害と脳溢血研究所のエドモンドは言う。



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