州立カリフォルニア大学、オクラホマ大学の共同研究で、子供に発症する連鎖球菌由来の強迫行為のメカニズムがある程度明らかになった。
連鎖球菌の内の咽喉菌に対する抗体が、間違って脳の酵素を攻撃して、神経細胞間の連絡を妨害し、子供に強迫行為とチック(PANDAS:連鎖球菌性小児自己免疫神経精神障害)の症状を引き起こしているのが分かった。 急性のPANDAS患者から取った血液サンプルを培養した神経細胞に加えると、4分の3で脳の酵素のレベルを高く押し上げた。同様に、PANDAS患者から取った血液サンプル中には4分の3の割合で連鎖球菌に対する抗体が発見され、そうでない人からのサンプルでは23%であった。 PANDAS患者の脳脊髄液には、高レベルの連鎖球菌によると疑われる酵素が発見されたのに対して、PANDASでない人のそれには少しかあるいは全然発見されなかった。脳脊髄液は脳を浸している液体で脳の状態と関連している。以上は、スーザン・シュードー、リサ・スナイダー、クリスチン・カーバン、メデレイン・カニンガム等が2006年7月26日に神経免疫学誌インターネット版に発表したものである。 シュードー等は、連鎖球菌に対する抗体が脳の連結を邪魔するのではと推定していたが、何が関連しているのかはわからなかった。彼等は研究を進める上で、リウマチ熱によって誘発されることで有名な急性の不随意運動であるシデナム舞踏病を調査した。リウマチ熱は連鎖球菌による自己免疫反応により起きると考えられている。即ち体が自身の体を攻撃する反応である。 運動障害を伴う患者では連鎖球菌抗体のレベルが高い。この抗体が脳の酵素を活性化させ、それがグルタミン酸塩を主とする神経伝達物質を生産分泌し、強迫行為につながると考えられている。シュードー等の別の研究では、PANDAS患者から取った血液サンプル中の抗体を取り除くと、酵素は活性化しなかった。 シュードー等は、PANDAS患者では舞踏病より比較的低レベルの酵素活性化が見られ、これが強迫行為に関係しているのでは無いかと提言している。まだ抗体が血液と脳を隔てる壁をどのように越えるかは未知であるが、連鎖球菌に対する抗体が神経伝達を妨害し、細胞に影響与える事が分かって来た。 脳科学ニュース・インデックスへ |