自殺の原因は遺伝子にある可能性


2001年4月6日
 
アメリカ病気治療予防センターによると自殺はアメリカの8番目の死因になる。特に15歳から24歳までの若者では3番目の死因である。最近号の分子精神医学誌にはフランスとスイスの研究者の2つの論文が掲載されている。それによると自殺に関係がある2つの遺伝子の変異体が発見された。その意味する所は自殺の原因には遺伝要素が絡んでいるらしいと言う事である。

最初の論文である「自殺企図とトリプトファン水酸化酵素遺伝子」を読むとある一定の遺伝子要素が自殺企図にかなりかかわっているらしい事が疫遺伝子学研究結果から明らかになって来た。神経伝達物質であるセロトニンをコントロールする部分が重要な役割をしているらしい。このレポートではトリプトファン水酸化酵素(TPH)の遺伝子コード読み取り部分に焦点を合わせている。この酵素はセロトニンの生物学的合成率を制御し自殺企図に関連があると見られる部分である。

研究では231人の自殺未遂者と281人のそうでないグループのトリプトファン水酸化酵素遺伝子の中の7つの変異体を調べた。3’と呼ばれる暗号領域でない部分の変異体と自殺未遂とは重要な関係があるのが発見された。関連性は特に激しい形の自殺未遂及び強い鬱病の履歴を持つ被験者に目立った。この研究と以前からの研究結果が示すのは3’と呼ばれるトリプトファン水酸化酵素遺伝子の変異体は自殺思考、不安定な感情、衝動的攻撃性等を引き起こすファクターになっていると推測される。

2番目の報告のタイトルは「自殺企図と低活性セロトニン搬送遺伝子の関連性」である。今まで研究で自殺企図とセロトニンシステムの機能不全は重要な関連がある事が分かっている。データが示す所では激しい自殺行為では特にはっきり現れている。セロトニン搬送遺伝子の促進領域にある(S/L alleles)機能的変異体と呼ばれる部分が自殺企図と関連しているらしい。この遺伝子のS対立遺伝子はセロトニン搬送遺伝子の表現の弱さおよび低セロトニン吸収レベルとも関連している。

著者は西欧白人系の51人の激しい自殺未遂者と139人の全く自殺未遂をした事が無い人達を調べて遺伝子調査をした。S対立遺伝子とSS遺伝子型の現れる頻度は自殺未遂者に特に多く見られた。この研究と以前からの研究を総合してセロトニン搬送遺伝子の暗号読み取り部分の変化が激しい自殺未遂と関連があるのが分かって来た。



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