イェール医科大学の研究チームは、画期的成果であるトゥレット症候群を発症させると思われる遺伝子を発見したと発表した。遺伝子はSLITRK1と呼ばれ、ある種のトゥレット症候群の発症原因になっている。この論文は10月14日のサイエンス誌に掲載された。 「我々はトゥレット症候群の発症を促す遺伝子の変異、表現、機能等のデータを得ている。このデータはトゥレット症候群を分子、細胞レベルで理解する上で需要な手がかりを与えるでしょう。この成果が更に少数の他のトゥレット症候群患者にも応用できれば、病気のプロセスを理解する上で役立つでしょう」と論文著者のマシュー・ステート氏は言う。 トゥレット症候群は比較的一般にある神経の病気でティックと言われているが、その症状は突発的で繰り返し起きる動き、発声を特徴としていて、児童の1%がこの症状を持つ。ティックは子供時分に発病し、思春期にピークに達する。生命に異常を及ばす事はないが、ティックを持つ子供は、他のADHD注意欠陥多動性障害)や、強迫行為、鬱状態を併発する場合が多い。ステート氏によれば奇妙な発声をするトゥレット症の子供は少なく、それが起きるのは僅か数%であると言う。 過去何年間もトゥレット症候群を発症させる単独遺伝子の発見に研究が注がれてきたが、見つからなかったので、恐らく遺伝子の組み合わせで発症するのではと最近は考えられていた。ステートの研究チームはトゥレット症候群の大きなグループに存在する共通遺伝子を調べる手法ではなく、イェール大学の共同著者であるリチャード・リフトン氏が推奨する方法で探した。即ち、トゥレット症候群患者としては一般的でない人の遺伝子を調べて、染色体異常を発見した。 イェール大学の神経生物学のネナッド・セスタン氏とアンゲリキ・ルービ氏の協力を得て、ある子供のDNAの違いを発見する為に分子分類法を採用した。その子供のDNAでは、特に脳内で表現される遺伝子で染色体のブレークポイントの近くに異常を発見した。この遺伝子を他の174人のトゥレット症候群患者の遺伝子と比較した所、1家族にDNAの異常なつながりを発見した。また全く同一だが希に見る遺伝子変異を2つの家族(親族では無い)に発見した。この2番目の発見は蛋白質をコードする部分では無く、通常ジャンクDNAと呼ばれる部分に起きていた。 論文の著者であり大学院生であるケネス・クワン氏は、この遺伝子の一部分がマイクロRNAと呼ばれる小さな分子と相互作用をしながら遺伝子制御に関わっていると発表している。繰り返しの実験の結果、これが事実であるのを研究チームは確認している。 この研究は一部、国立神経障害及び卒中研究所と国立研究資源センターの協力のもとに行われた。 脳科学ニュース・インデックスへ |